トランプ米大統領はこれまでの外国訪問の際、常に自分を主役に据えてきた。だが、今週のスイスのダボス訪問はとりわけ劇的なものになりそうだ。

トランプ氏は世界経済フォーラム(WEF)年次総会(ダボス会議)出席に先立ち、米国によるグリーンランド領有に反対しデンマークを支持する欧州諸国に対し、10%の輸入関税を課すと発表。欧州連合(EU)と北大西洋条約機構(NATO)の双方の基盤を再び揺さぶった。これはEUや英国と結んだ貿易合意を踏みにじる動きだ。

トランプ氏は以前から欧州に不満を募らせ、米国の最も緊密な同盟国を多く抱えるこの地域について、米国の寛大さや軍事力にただ乗りする存在だと繰り返し批判してきた。米IT大手企業を執拗(しつよう)に締め付けているとも非難している。

欧州各国の指導者はトランプ政権2期目の発足以降、トランプ氏の過激な発言を比較的冷静に受け止めてきた。しかし、グリーンランドを巡る関税賦課の脅しは緊張を再燃させ、これまで控えてきた報復措置に欧州を向かわせかねない。EU首脳は今週中に緊急会議を招集する一方、トランプ氏の側近は強硬姿勢を強めた。

トランプ氏のダボス訪問に同行するベッセント米財務長官は18日、NBCニュースの番組「ミート・ザ・プレス」で「欧州の人々は、最良の結果は米国がグリーンランドの支配を維持ないし獲得することだと理解するだろう」と指摘した。

その上で、米国が既に防衛義務を負っている地域を直接支配することは抑止力を高めると主張した。「われわれは世界最強の国だ。欧州は弱さをさらけ出し、米国は強さを示している」と語った。

トランプ氏は今回、EU本部があるブリュッセルやデンマークの首都コペンハーゲンではなく、世界経済秩序を象徴する主要な会合の一つが開かれるアルプスへ向かう。長年にわたる多国間の制度や同盟から米国の関心をそらし、代替的な枠組みへと軸足を移す動きの一環だ。それには、パレスチナ自治区ガザの暫定統治を監督する「平和評議会」も含まれる。

今回のダボス訪問は、大統領として3度目となる。2期目就任からわずか数日後だった昨年はオンライン形式で演説した。

トランプ氏は昨年の会合の演説で、欧州への不満を表明。「米国の立場から見て、EUはわれわれを非常に非常に不公平に、非常にひどく扱っている」とし、税制や関税、規制への不満を並べた上で、「私は欧州を愛しているから、建設的であろうとしている」と話した。

トランプ氏は当時、「常識の革命」を約束した。その後の政策は常識的と言うには程遠く、欧州を含む広範な国・地域に関税を適用し、ウクライナ支援を巡っても揺れ動いている。

トランプ氏は今回のダボス会議では、11月の米中間選挙に向けて有権者の政権・共和党支持てこ入れを狙い、住宅対策などアフォーダビリティー(暮らし向き)向上の施策を打ち出す見通しだ。

だが、グリーンランドを巡るトランプ氏の最新の言動は、EUや英国との昨年の合意を受けてかろうじて成立していた米欧間の貿易休戦を打ち砕くものとなる。

トランプ氏は17日、デンマークなど欧州8カ国に対し10%の関税を課し、6月には25%に引き上げると表明。これに対しフランスのマクロン大統領は、EUとして最も強力な対抗措置発動の検討の可能性を示唆し、スターマー英首相は18日、トランプ氏との電話会談で関税の威嚇は「誤りだ」と伝えた。

トランプ氏とイデオロギー的に近いイタリアのメローニ首相は、トランプ氏と電話会談し、事態沈静化の説得を試みたことを明らかにした。

「対話を再開し、エスカレーションを避けなければならない。そのために私は取り組んでいる」と、韓国訪問中のメローニ氏はソウルで記者団に述べた。

トランプ氏については、「話を聞く姿勢はあるが、米国の視点からすると、欧州側からのメッセージが明確ではなかったのではないかと考えられる」と話した。

トランプ政権1期目のペンス元副大統領も、トランプ氏に路線変更を呼び掛けた。

ペンス氏は18日、CNNの番組「ステート・オブ・ザ・ユニオン」で、「現行の姿勢はデンマークだけでなく、全てのNATO同盟国との強固な関係を分断しかねず、沈静化を願っている」と発言。一方で、グリーンランド領有の目標自体は支持すると語った。

関税は発動されない可能性もある。ホワイトハウスは週末を通じ、どの法的権限を用いるのかについて説明を控えた。最終的には、連邦最高裁が関税賦課の根拠として違法の判断を下す可能性のある1977年国際緊急経済権限法(IEEPA)を活用する可能性もある。

ホワイトハウスのハセット国家経済会議(NEC)委員長は18日、関税の法的根拠について説明を受けていないとしつつも、交渉上の駆け引きだとの見方を示した。

ハセット氏はFOXニュースの番組「サンデー・ブリーフィング」で、「今は冷静になり、レトリックを脇に置いて交渉の席に着き、誰にとっても最善の合意を取りまとめることができるか、探るべきときだと思う」と語った。

原題:Trump Tees Up Davos With Tariff Power Play to Seize Greenland(抜粋)

--取材協力:Donato Paolo Mancini.

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