英国では、特定のがん遺伝子変異を持つ男性に限って定期的な前立腺がん検査を提供する方針が示され、議論を呼んでいる。政府に対し、こうした助言を覆すよう求める圧力が強まる可能性もある。

英国立スクリーニング委員会は11月28日、BRCA1/2遺伝子変異を持つ男性を対象にした検査は費用対効果が高く、前立腺がんの過剰診断も抑えられるとの見解を示した。だが、これには遺伝子検査そのものにかかる費用のモデルは含まれていない。

全男性を対象にした場合、過剰診断のリスクが高まり、前立腺がん死亡の小幅な減少による利益を上回ると委員会は指摘。黒人男性についてはエビデンスが不足しており、さらなるデータが必要だとした。

ストリーティング保健・社会福祉相には、前立腺がんリスクの高い男性向けのスクリーニング導入を求める圧力が強まっている。政府は技術的には委員会の勧告を覆すことが可能だが、これまでは定期的な検査自体を提供しないとの委員会の指針に従ってきた。前立腺がんと診断されたキャメロン元首相や五輪自転車競技の元英国代表クリス・ホイ氏など、著名人が検査プログラムの導入を呼びかけている。

費用対効果

マイク・リチャーズ委員長は「この件については誰もが意見を述べる権利があるが、国立スクリーニング委員会としてはエビデンスに基づくアプローチを取るべきだと確信している。われわれのアプローチは『利益が不利益を上回るか』という判断に基づいている」と述べた。

同委員会は、全男性、黒人男性、特定のがん家族歴を持つ男性、特定の遺伝子変異を有する男性を対象に検査を提供するそれぞれのケースについて、費用対効果モデルを検討した。今回の草案に関しては現在、意見公募が行われており、委員会は来年3月に再検討する。

前立腺がん検査として現在使われているのは、前立腺特異抗原(PSA)検査で、生命を脅かす可能性が低いがんまで診断してしまうこともある。治療を受けた男性は勃起不全や尿漏れなど重大な副作用に苦しむケースも多い。こうしたエビデンスがあるため、英国ではPSA検査は男性に定期的に提供されていないが、希望すればかかりつけ医に依頼できる。

原題:Routine Prostate Cancer Test Rejected for Most Men in UK(抜粋)

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