(ブルームバーグ):男子サッカーのドイツ代表として活躍したマリオ・ゲッツェ選手は33歳になり、一般的には現役引退後の人生を意識し始める時期に差しかかっている。
だが同選手は数年前からすでに準備を進めてきた。米プロバスケットボールNBAの大スター、レブロン・ジェームズやケビン・デュラントといった米国のトップアスリートに触発され、現役引退後も大きく育てたいと考えている堅固なプライベート投資ポートフォリオを構築している。
現在ブンデスリーガ(ドイツ1部リーグ)のアイントラハト・フランクフルトに所属するゲッツェ選手は、早くから頭角を現した。ブラジルでの2014年ワールドカップ(W杯)決勝では、22歳になったばかりで決勝点を挙げた。
名声を高める一方で、投資の腕も磨いていた。約7年前に手がけた最初の案件は、父親が教授を務めていたドルトムント大学発のスタートアップだった。その後は北欧や米国にも投資対象を広げ、とりわけ米西海岸への関心を深めていった。
かつてはプロスポーツ選手が引退間際になってから、次のキャリアを模索する例が一般的だったが、ゲッツェ選手の戦略的な資産形成は、彼の世代で起きつつある変化を象徴している。
テレビ解説者や代理人、コーチといったスポーツ関連の役割にとどまらず、現役引退後の所得減に順応するだけでもなく、より長期的に考える若い選手が増えている。
ゲッツェ選手はインタビューで、「米国のアスリートがどのように投資しているかを詳しく見てみた。一部はVC(ベンチャーキャピタル)セクターで非常に積極的だ。それから欧州で同じような取り組みをしている人々を調べ、自分もVCにひかれるようになった」と打ち明けた。
ゲッツェ選手の投資事業体「Companion-M」は、ソフトウエアやヘルスケア、サイバーセキュリティー、バイオテックといった分野に参入したばかりのスタートアップに照準を当てている。
同選手と少人数の助言チームは月に約100件の案件を検証し、起業初期の企業に対し2万5000-5万ユーロ(約450万-900万円)のエンジェル投資を1、2件行うのが通常だ。時折、「シリーズA」と呼ばれる初期的な資金調達に参加することもある。

もちろん失敗もあった。ゲッツェ選手は「サッカーのピッチでのパスミスのようなものだ。重要なのはそこから何を学ぶかだ」と語り、現在「非稼働」と呼ぶ投資先が7、8社あると明らかにした。
ただ、全体としては欧州と米国の企業投資や多数のファンドから成るポートフォリオに満足しているという。
ゲッツェ選手はプライベートクレジット投資にも前向きで、年内にあと1、2件の投資を追加することも検討している。長期的な展望も考え始めている。「現役を終えた後は、投資活動に集中するつもりだ」と言う。
原題:German Football Star Mario Goetze Chases Gains Off the Field(抜粋)
--取材協力:Rob Dawson.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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