1日の日本市場は債券が大幅下落。日本銀行の植田和男総裁の講演を受けて今月の利上げ観測が高まり、金融政策に敏感に反応する新発2年債利回りが17年ぶりに1%台に乗せたのをはじめ、幅広く金利が上昇した。円は対ドルで155円台半ばまで買われ、株式は大幅反落した。

植田総裁は18、19日の金融政策決定会合で「利上げの是非について適切に判断したい」と述べた。総裁は今年1月、全国地方銀行協会の新年の集いであいさつした際、翌週の決定会合で米新政権の政策や春闘の賃金動向などを精査し、追加利上げを行うかどうか判断すると明言。同会合で利上げに踏み切った。

マーケットコンシェルジュの上野泰也代表はリポートで、植田総裁は12月利上げを事実上「予告」したと市場が受け取るほど強い「地ならし」を行ったと指摘。利上げに向けて「高市政権との水面下の調整が順調に進んでいることを示唆している」との見方を示した。

スワップ市場が織り込む12月利上げ確率は講演を受けて8割超に上昇した。先週前半は3、4割程度だった。小枝淳子日銀審議委員の講演、増一行審議委員の日本経済新聞とのインタビューを受けて、早期利上げ観測が徐々に高まっていた。

債券

債券相場は大幅下落。12月利上げ観測の高まりを受けて新発2年国債利回りが1%台に上昇したほか、新発5年債利回りは1.38%、新発10年債利回りは1.875%といずれも08年以来の高水準を更新した。

植田総裁は利上げを見送った10月会合後の会見で、春闘の「初動のモメンタムがどうなるか、もう少し情報を集めたい」と述べていた。野村証券の岩下真理エグゼクティブ金利ストラテジストはこの点について「講演の中の賃金を巡る環境と動きと題した図表を見る限り、利上げの準備は整ったと言っているとしか聞こえない」と指摘。12月の可能性が高まったとみる。

岩下氏はその上で、日銀は今年1月の利上げと同様に100%織り込ませた状態で利上げしたいはずで、市場の織り込みが上昇するにつれ一段と金利上昇圧力がかかるとの見方を示した。

2年債は需給悪化懸念からの売り圧力も強まっている。11月28日の2年債入札は弱めの結果となった。25年度の補正予算後の国債発行額が増加し、短期国債に加えて2年債が発行増額となったためだ。2年債は来年1月から1回の入札当たり発行額が現在の2兆7000億円程度から1000億円多い2兆8000億円程度となる。

新発国債利回り(午後3時時点)

為替

円相場は対ドルで155円台半ばに上昇。日銀の利上げ観測に加え、米国の利下げへの期待が円の支えになっている。

SBI FXトレードの上田真理人取締役は、今までは来年1月会合での利上げを予想していたが、植田総裁の発言を受けて12月の可能性は十分あると語った。

外為どっとコム総合研究所の神田卓也調査部長は、植田総裁の発言はいつもより踏み込んだものだったとした上で、利上げを織り込めば織り込むほどサプライズ感もなくなるとし、さらに円高が進むかは疑問だと述べた。

株式

株式相場は大幅反落し、日経平均株価は1000円超下げる場面があった。為替相場での円高進行を受けて自動車などの輸出関連株が相場を押し下げた。日銀の利上げ期待から金利が上昇し、金利高が重しになる不動産が売られた一方、銀行株は買いが優勢だった。

大和証券の坪井裕豪チーフストラテジストは、植田総裁が金融政策決定会合ではない場であえて利上げの是非を適切に判断すると話したことは「利上げの確度を高める」と指摘。株式市場には金利高・円高を通じて「重荷になっている」と話した。

個別銘柄では、ゴールドマン・サックス証券が目標株価を引き上げたトリケミカル研究所株と、親会社のキヤノンが株式公開買い付け(TOB)で完全子会社化すると発表したキヤノン電子株が、それぞれ制限値幅いっぱいのストップ高となった。

米国の12月利下げの可能性を巡り、米経済指標にも注目が集まっている。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の大西耕平上席投資戦略研究員は、 12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)会合への思惑が強まる中、米供給管理協会(ISM)製造業景況指数の発表を控えて様子見姿勢も広がっている印象と話した。

この記事は一部にブルームバーグ・オートメーションを利用しています。

--取材協力:山中英典.

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