(ブルームバーグ):シカゴ中心部から西へ約45分のところに、控えめな外観のガラス張りのデータセンターがある。世界最大の先物取引所運営会社であるCMEグループのデジタル業務の中核拠点だ。
CMEは約20年にわたり、イリノイ州オーロラにあるこの複合施設を拠点としてきた。総床面積45万平方フィート(約4万1800平方メートル)の施設は、高頻度取引業者やウォール街の大手企業の間で広く知られ、競争優位を得るために周辺の場所取りが長年繰り広げられた。
トレーティング会社がデータセンターの近くに拠点を置きたがるのは、レイテンシー(遅延)を抑えるためだ。データの移動距離を最小化することで、取引の処理時間を数マイクロ秒でも短縮できるからだ。

このデータセンターが28日、世界の株式・外国為替・債券・商品市場で取引する関係者の間で一躍悪名をとどろかせた。複合施設内の冷却システムに不具合が生じ、CMEの先物・オプション取引プラットフォームのほぼ全機能が停止し、世界中の市場が混乱に陥った。
データセンターを運営するサイラスワンは、冷却システムの問題に対応するためチームが昼夜を問わず作業していると説明したが、それ以上の質問には回答しなかった。
世界の市場インフラにとって不可欠なこの施設の歴史は2009年にさかのぼる。CMEが先物・オプション取引プラットフォームGlobex(グローベックス)の事実上の中枢として稼働させたのが始まりだ。
16年、CMEは自社でインフラを保有する方針を転換し、ダラスを本拠とするサイラスワンに同施設を売却した。CMEは取引の継続に不可欠なコンピューター群を引き続き同地に置くため、15年間のスペース賃借で合意し、実質的に日常運用を外部委託する形となった。
サイラスワンはリスクの大きさを理解していた。同社の当時の最高経営責任者(CEO)ゲーリー・ウォイタセック氏は、アナリスト向け説明でこのデータセンターを高速取引と先物取引の「震源地」と表現した。2018年に接続性向上のため建設を進めていた新タワーの事業意義を説明する際には「スピードが最重要だ」と強調した。
こうしてサイラスワンは、米国、英国、ドイツ、シンガポールに約50カ所展開するデータセンターポートフォリオにオーロラを組み込んだ。これらのデータセンターは、テクノロジー、金融サービス、エネルギー、医療、研究、コンサルティングなど幅広い業種を顧客としている。
EYパルセノンの戦略・トランザクション部門マネジャー、トビアス・ボップ氏によれば、サイラスワンは新たなデータセンターを数多く建設しており、現在の市場でかなり重要なポジションを占めている。
ファースト・ポイント・グループでデータセンター分野の人材採用を担当する上級プリンシパルコンサルタント、ローレン・エクルズ氏はサイラスワンについて「大手プレーヤーで、非常に良い評判を持っている」と述べた。
その良い評判が21年、プライベートエクイティー(未公開株、PE)投資会社の目に留まった。人工知能(AI)ブームがデータセンター需要を押し上げ始める中、KKRとグローバル・インフラストラクチャー・パートナーズ(GIP)はサイラスワンを約114億ドル(約1兆8000億円)で買収することで合意した。
買収は、AIモデル開発会社や大手テクノロジー企業からの計算需要急増の波に、PE投資会社が乗ろうとする動きの象徴と見なされた。
KKRはサイラスワンに関する質問をすべてデータセンター運営会社に回した。GIPを今年買収したブラックロックの広報担当者はコメントを控えた。
27日に冷却装置が故障した後、サイラスワンがCMEのオーロラでの業務を別のデータセンターへ移管しようとしたかどうかは明らかでない。
事情に詳しい関係者によれば、CMEの障害復旧計画ではニューヨーク近郊のデータセンターに業務を移すことが定められていたものの、CMEはマッチングエンジンをオーロラで再起動する判断を下した。
CMEが当時得ていた情報では冷却問題が当初の想定より早く解消される見通しだったためだという。サイラスワンのウェブサイトによれば、このデータセンターには故障時に備えて追加の冷却装置が設置されている。
EYパルセノンのパートナー、トマ・ソレルアック氏はシステム設計上の問題の可能性を指摘。「通常、この種のデータセンターでは、電力や冷却に関するこうした問題を避けるため、多くの冗長性が確保されている」と述べた。
原題:The Private Equity-Owned Data Center Behind Giant CME Outage (1)(抜粋)
--取材協力:Isis Almeida.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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