(ブルームバーグ):欧州の航空機メーカー、エアバスが、主力機A320のソフトウエア不具合のため緊急アップデートを要請したことに対し、世界の航空会社は対応を急いだ。一時は混乱も懸念されたが、迅速な対処により米国で重要な感謝祭の休暇シーズンにおける大規模な運航停止は避けられた。
エアバスと欧州航空安全機関(EASA)が緊急指令を出してから24時間もたたないうちに、米アメリカン航空、インドのインディゴ、英イージージェットなどA320の主要運航会社は、大半の機体で以前のバージョンのソフトウエアに戻す作業を完了し、ほぼ通常通りの運航を維持した。
ダフィー米運輸長官はX(旧ツイッター)への投稿で「旅行者が大きな混乱を予想する必要はない」とし、影響を受けた全米の航空各社が、機体への必要作業を期限までに完了する見通しだと説明した。
アメリカン航空は29日、影響を受けた209機のうち対応が必要なのは残り4機のみと発表した。デルタ航空とユナイテッド航空はA320のソフトウエア問題による影響はなかったとしている。
エアバスが28日遅くに発表した今回の緊急対応は、米国の乗客が感謝祭の休暇から帰路につくタイミングに航空会社と旅行者を不意打ちした。
エアバスによると、今回の不具合で影響を受けた機体は6000機超に上り、世界のA320の過半数を占める。特定の条件下で、飛行制御維持に必要なコンピューターデータが破損するリスクがあるという。
今回の修正が必要な機体は旧バージョンのソフトウエアに戻す必要があり、データのアップロード作業は最短で2-3時間で完了する。ただ、古い機材を中心に最大1000機がハードウエア自体の交換を必要とし、この場合は整備期間中の運航停止が避けられないと、非公開情報だとして匿名で語った関係者は述べた。
A320を運航する航空会社は、機体の次の定期便までに修正を完了させる必要があり、対応の遅れは深刻な運航混乱につながる恐れがあった。
今回のソフトウエア修正は、およそ1カ月前に発生したジェットブルー航空の機体の事案を受けて指示された。同機は「強い太陽放射」にさらされたことでソフトウエアが誤作動し、操縦士の入力なしに突然機首が下を向いた。負傷者は出なかったものの、機体は通常の飛行経路を外れ、この事案が調査のきっかけとなった。

エアバスのギヨーム・フォーリ最高経営責任者(CEO)はリンクトインへの投稿で、同社のチームが運航会社の支援と更新作業の早期完了に向けて昼夜を問わず取り組んでいると強調した。
米国では、感謝祭の旅行需要が記録的な水準となる中、約1600機のA320ファミリー機を運航する各社が、混乱を最小限に抑えながら修正作業の実施を急いだ。米連邦航空局(FAA)は、欧州当局と同様の緊急耐空性指令を出し、米国籍機およそ545機が対象になるとした。
A320を大量発注しているインドのインディゴは、影響を受けた200機のうち160機で土曜正午までに点検を完了し、欠航は発生していないと発表した。
一部の航空会社は当初、影響を受けた。コロンビアのアビアンカはフリートの7割超が影響を受け、12月8日まで航空券の販売を停止すると発表した。
共同通信が報じたところによると、日本のANAホールディングスは30日、予定していた作業を同日朝までに終え、通常運航に戻ったと明らかにした。欠航は全日空の国内線で29日に95便、30日に6便。合計で1万3730人に影響したとしている。
オーストラリアとニュージーランドでも29日朝に欠航が発生した。カンタス航空の子会社ジェットスターとニュージーランド航空は、一部のA320機を運航停止とした。

英民間航空局(CAA)は、航空各社が該当機体の大半でソフトウエア更新を実施しており、英国便の影響はごくわずかで乗客の不便も最小限だと説明した。

A320は米ボーイングの737モデルと競合し、いずれも民間航空産業を支える主力機だ。エアバスはすでに、プラット・アンド・ホイットニー製エンジンを搭載したA320neoで問題を抱えており、整備のため数百機が一時的に運航停止となっている。
現代の航空機では、機内ソフトウエアが安定飛行にとってますます重要になっており、不具合が起きれば深刻な事故につながる恐れがある。
原題:Airlines Limit Disruptions from Airbus A320 Software Glitch(抜粋)
--取材協力:Kate Duffy、Leen Al-Rashdan、野原良明、Sri Taylor.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
©2025 Bloomberg L.P.