(ブルームバーグ):最初の異変が訪れたのは米東部時間27日午後9時41分(日本時間28日午前11時41分)だった。ウォール街の大半が感謝祭で休業となり、トレーダーにとっては休日をなお楽しんでいる時間帯だった。
世界最大の先物取引所運営会社である米CMEグループは顧客に送った1行の電子メールで「技術的な問題により」先物およびオプション取引の「市場が停止した」と通知した。
原因は、シカゴから約80キロ離れたイリノイ州オーロラ郊外にあるデータセンター複合施設の冷却システムだった。同施設は、日々数兆ドル規模のデリバティブ取引を支える主要拠点だ。事情に詳しい関係者によると、外は極寒にもかかわらず、施設内の温度は摂氏38度を超えていたという。
当時、CMEが把握していた情報では、プライベート・エクイティー(PE、未公開株)投資会社が所有するサイラスワンによって運営されている同データセンターの障害は短時間で収まる見通しだった。そのため、ニューヨーク市近郊のバックアップ施設への切り替えは見送られた。

しかし、この判断の重大さはすぐに明らかになった。CMEが顧客に対し、問題は「短期」に解消されると電子メールで伝える中、障害は長引き、世界の金融システムの広い範囲を数時間にわたり停止させた。
東京からロンドン、そして最終的にはニューヨークに至るまで、金や原油、米金利の方向性を巡る取引に至るまで、あらゆる市場での取引が一斉に停止された。
28日に入り取引がほぼ復旧した後も、混乱は米国時間の取引時間中にわたって続き、取引プラットフォームのCMEダイレクトはほぼ終日オフラインとなった。
今回の障害は、少数の大手取引所に依存する形で高度に統合が進む世界の市場が抱える脆弱(ぜいじゃく)性を浮き彫りにした。また、CMEの危機対応計画やサイラスワンのデータセンターに依存する体制についても疑問を投げかけている。
ロンドンの金融サービス会社マレックス・グループの清算部門トップ、トーマス・テキシエ氏は、今回の停止は「先物市場がいかに集中しているかを示した。主要商品の取引に代替となる取引所はほとんど存在しない」と指摘した。
今回の約10時間に及ぶ障害は、2019年にCMEで発生した取引停止時間を超えた。またCMEが世界市場の重要インフラとなっている現状を改めて示した。CMEグループのデータによると、10月のデリバティブ取引量は1日平均2600万枚を超えていた。
CMEは28日の取引終了時点で、CMEダイレクトを含む全ての取引を復旧させた。CMEの担当者は、当日の顧客向け通知以上のコメントを控えた。
サイラスワンは発表資料で、今回の問題はコンピューター冷却に使用するシステムに影響した機器の故障が原因であり、「可能な限り迅速かつ安全に通常業務を復旧させるため、24時間態勢で作業している」と説明した。複数の冷却システムを限定的な容量で再起動し、運用を補うための仮設冷却設備も導入したという。
サイラスワンの冷却システムで何が起きたのか正確なところは不明だ。ただし同社のウェブサイトによると、データセンターには冗長システムがあり、気温がおよそ摂氏マイナス1度以下になると無料の冷却機能が利用できるという。
約4万1800平方メートルに及ぶイリノイ州オーロラ郊外のデータセンターは世界中のトレーダーにとって重要な施設であり、その影響は広範囲に及んだ。ロンドン時間では米国債の先物取引が停止され、金は不安定な動きを見せ、マレーシア証券取引所の米原油やパーム油の取引にも影響が及んだ。
取引システムが復旧した後も、問題が完全に解消されたことが確認されるまで、一部のマーケットメーカー(値付け業者)が取引参加を控える動きが続いたと、事情に詳しい関係者は明らかにした。
原題:Worldwide Markets Roiled by Data-Center Snafu in Chicago Suburb(抜粋)
--取材協力:William Shaw、Christian Dass、Sangmi Cha、Julien Ponthus.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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