高頻度取引を手がける米シタデル・セキュリティーズは19日、マイクロソフト、アマゾン・ドット・コム、アルファベット、メタ・プラットフォームズが発行した社債をまとめた2種類のバスケットについて、マーケットメーク(値付け業務)を開始した。人工知能(AI)インフラに巨額を投じる企業の債券を取引する、流動性の高い手段を提供する。

クレジットトレーディングのグローバル責任者サム・バーベリアン氏によると、バスケットは満期10年の債券で構成されるものと、30年物で構成されるものの2種類。投資適格社債の投資家やマクロ戦略を取るヘッジファンドなどが、これらテクノロジー大手へのエクスポージャーを迅速に増減できる仕組みになっていると同氏は説明した。

バーベリアン氏は19日のインタビューで「このテーマで顧客の意識面と流動性提供の両面で中心的存在になることを目指している」と説明。「ハイパースケーラー(大規模クラウド事業者)が今後も新たな債券を発行し続ける中、少なくとも今後1-2年は、これらの債券に投資する人やヘッジとして購入する人にとって極めて重要な手段になるだろう」と語った。

同社によれば、これらの社債は1日当たり約10億ドル(約1600億円)の取引があり、発行継続と残高拡大を背景に今後も増加が見込まれるという。個々の社債を条件やリスクごとに取引するよりも、バスケットの形でまとめて取引した方が迅速に対応できると説明している。

バーベリアン氏は「顧客から非常に好意的な反応を得ており、規模を柔軟に拡大できる点でヘッジ手段として最も効果的な選択肢の一つになり得る」と述べた。

富豪のケン・グリフィン氏が2002年に創業したシタデル・セキュリティーズは、株式および債券市場での売買を仲介するマーケットメーカー。同社は既に、金融機関債でも今回と同様の仕組みを導入しており、6銀行が発行する10年物社債のバスケット取引でマーケットメークを行っている。

テクノロジー企業各社は、人工知能(AI)向けインフラ構築への大規模投資を進めており、そのために前例のないペースで社債市場から資金を調達している。AI関連の債券は既に投資適格債市場で最大のセグメントを占めるようになっている。

一方、AI事業がまだ十分な収益や利益を生み出しておらず、巨額投資を正当化できる段階にないとの懸念がある。成長期待が裏切られた場合のリスクを意識し、個別のハイパースケーラーが債務不履行に陥った場合に支払いを受けられるクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)の取引が活発化している。

バーベリアン氏は「これらの銘柄を売買したいという需要は非常に高く、当社は顧客が流動性にアクセスできる革新的な手段を提供しようとしている」と述べた。

原題:Citadel Securities Launches AI Bond Trading Baskets for Hedging(抜粋)

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