(ブルームバーグ):米政府は電力需要の急増に対応するため最大10基の大型原子炉を購入・保有する計画を進めており、その費用は日本が拠出を表明している5500億ドル(約86兆円)規模の対米投資によって賄われる可能性がある。
米エネルギー省の当局者カール・コー氏が19日、この異例の枠組みの詳細を説明した。同氏によると、日本による対米投資5500億ドルのうち、最大800億ドルがウェスチングハウス・エレクトリック製の新型原子炉建設に充てられる見通し。
コー氏はテネシー州の先進エネルギー産業協議会が主催した会議で「政府が民間市場に介入することは本来、極めて慎重であるべきで、通常は行わない」とした上で、「しかし、今は国家的な緊急事態だ」と述べた。また、多くの細部が決定されていないとしながらも原子炉建設の実現に自信を示し、「どこに建設するかを検討しているところだ」と語った。
トランプ政権は、人工知能(AI)を支えるデータセンターや国内製造業の復活に必要な電力の不足に危機感を強めている。トランプ大統領は2期目の就任初日に国家エネルギー緊急事態を宣言し、パイプライン建設や送電網拡充に加え、経営難にある石炭火力発電所の救済を迅速化する権限を発動した。
米国が最後に大型原発を建設し、稼働に至ったのは10年以上前のことだ。その最後のプロジェクト、ボーグル原発を進めたサザンは予算を160億ドル超過し、計画より7年遅れて完成。以降、原発建設は高コストの代名詞としてエネルギー業界から敬遠されてきた。
しかし、AIブームにより大型原発に再び脚光が当たっている。エクセル・エナジーのボブ・フレンゼル最高経営責任者(CEO)は今年、こうした大型プロジェクトが再び注目を集める可能性を指摘していた。
一方で、日米貿易協定枠組みに盛り込まれた日本の資金コミットメントが実際に実行に移されるかは依然不透明だ。ホワイトハウスによると、日本は総額およそ3320億ドルを米国内のエネルギー関連プロジェクトに投資する計画で、その中にはウェスチングハウスの新型原子炉「AP1000」のほか、新世代の小型モジュール炉、新設火力発電所、送電網・パイプライン事業などが含まれている。
トランプ政権のエネルギー政策には、原発建設を加速する大統領令や、閉鎖された原発の再稼働を支援する政府資金も盛り込まれている。今年5月に署名された大統領令は、2030年までに10基の大型原子炉を着工する目標を掲げており、業界関係者は困難だが実現可能な水準とみている。
米エネルギー省にコメントを求めたがすぐに返答はなかった。
原題:US to Own Nuclear Reactors Paid for by Japan Investment Fund (1)、US to Own Reactors Stemming From Japan’s $550 Billion Pledge(抜粋)
(米当局者のコメントなどを追加して更新します)
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