人工知能(AI)関連株に投資資金が集中してきた日本株市場で、来期の業績を見据えた割安(バリュー)株投資が徐々に広がっている。循環物色に伴い今後本格的に盛り返すとの見方も出始めている。

注目を集めているのは株式益利回りが高い銘柄だ。想定される利益に対して株価が割安であることを意味し、丸紅や双日、関西電力や中部電力、INPEXなどが該当する。ブルームバーグのデータによると、益利回りが東証株価指数(TOPIX)構成銘柄の上位20%に入る銘柄群のパフォーマンスは6月末以降、指数全体を9ポイント以上上回っている。

みずほ証券の波多野紅美シニアクオンツアナリストは、バリュー株が全て好調なわけではないと前置きした上で、夏以降、益利回りファクターが効いていると指摘。直近のパフォーマンスが良いモメンタム株に追随するより「割安株を選好する動きが出ている」との見方を示す。

今月に入り米国でウォール街の経営幹部らがハイテク株の高過ぎるバリュエーション(株価評価)に相次いで警鐘を鳴らすなどし、日本株の最高値更新を主導してきたAI関連株にはやや陰りが出始めた。バリュー株への資金シフトでより多くの銘柄に買いが広がれば、相場上昇の持続性を高める可能性がある。

野村証券の古川真チーフ・ポートフォリオ・ストラテジストによると、益利回りが高い銘柄の中でも、特に来期の予想業績と比べて株価が割安な銘柄のパフォーマンスが強いという。

これは投資家の目線が既に来年度の業績に移っていることの証左だと同氏は分析。ヤマ場を迎えている今回の決算発表シーズンでは、「今期業績が芳しくなくても、来期業績の改善が見込める銘柄は優位に働く可能性がある」との展望を示す。

今後バリュー株全体が底上げされていくかどうかについては懐疑的な見方も残る。AI関連投資が長期にわたって行われる可能性が高いことを踏まえると、AI関連銘柄に投資資金が集まる環境は変わらないとの観測も強い。

とはいえ、AI関連株の急騰については投資家の間でも警戒感が高まりつつあり、他の投資先を探る動きも出始めている。

楽天投信投資顧問第二運用部の平川康彦部長は、モメンタムの強かったAI関連は「決算で利益確定売りにさらされる銘柄が増えてくるのではないか」と予想。「個人的にはポジションを少しずつ減らしてもいいと感じている」とし、代わって一部の出遅れ銘柄に資金が流入するとの見方を示す。

野村証券の古川氏は、日経平均株価をTOPIXで割ったNT倍率が11月に入って低下に転じたことに着目する。今年6月にもNT倍率の反転と同時にバリュー株が大幅にアウトパフォームする展開となったことから、今回も「バリュー株投資が再加速する可能性がある」と指摘した。

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