米政府閉鎖解除に向けて議会が一歩前進した。穏健派の民主党議員の一部による造反が事態打開につながった格好で、民主党が今回の攻防で最大の争点としてきた医療保険制度改革法(オバマケア)の補助金延長を勝ち取ることはできなかった。

民主党は今後数週間以内にオバマケア補助金延長に関して別途採決するとの約束を共和党から取り付けたものの、採決で勝利を収めることができるかは極めて不透明な情勢だ。

先週にはニューヨーク市長選やニュージャージー、バージニア州知事選といった地方選で相次ぐ勝利を収め、民主党内は祝賀ムードに包まれていたが、穏健派の動きは内部で亀裂を生む可能性が高い。

民主党のウォーレン上院議員(マサチューセッツ州)は「大きな誤りだ。国民は医療保険のために立ち上がって戦うことを求めており、それこそがわれわれがすべきことだ」と述べた。下院民主党トップのジェフリーズ院内総務も政府閉鎖解除に向けた上院の合意案を批判し、下院民主党は支持しないとの考えを示した。

一方、穏健派が指導部の意向に反して政府再開に動いたことは、ワシントンで共和党が依然として権力を握っている現実を浮き彫りにした。

政府機関再開に向けた共和党との交渉に関わった民主党のシャヒーン上院議員(ニューハンプシャー州)は、政府閉鎖が続く間は共和党が補助金延長の検討を一切行わないことが明らかになったと指摘。政府機能が制限される中、さらに交渉を先延ばしすることは「米国民が感じている苦痛を長引かせるだけだ」と述べた。

政府閉鎖解除に向けた手続き上の措置で支持に回った民主党穏健派の会見。左からケイン、シャヒーン、コルテス・マスト各上院議員(9日夜)

中間選挙の争点に

民主党には一定の救いもある。世論調査では政府閉鎖を巡る議会の行き詰まりについて、共和党に責任があると考える有権者が民主党を上回った。さらに今回の与野党対立で、低所得層4200万人への食料支援停止を各州に指示するという政治的に危うい主張へとトランプ政権を追い込むことになった。

また最大の争点であるオバマケアの補助金延長は、2400万人が月額数百ドルの保険料引き上げに直面するとみられる中で、依然として有権者の幅広い支持を集めている。

無所属ながら民主会派に所属するキング上院議員(メーン州)は10日朝のMSNBCの番組で、上院共和党トップのスーン院内総務が約束したオバマケア補助金の採決について「共和党を試す機会を得た」と語った。

民主党は今後、補助金の採決を足がかりに、2026年の中間選挙に向けて最重要テーマの一つである医療保険政策を中心とした選挙戦を展開する構えだ。

共和党が上院で補助金延長法案を阻止したり、下院で審議入りを拒んだりすれば、民主党は保険料高騰の責任は共和党にあると訴える構えだ。

一方、共和党も来年初めから大きく跳ね上がるとみられる医療保険料への対応策を迫られている。政府再開前に向けて補助金延長を交渉しないという点では党内の意見が一致しているが、その後の対応では深い隔たりがある。

共和党がこの問題への対応を誤れば、政治的代償を伴いそうだ。第1次トランプ政権下の2018年に実施された中間選挙では、共和党がオバマケア廃止を試みたことへの反発が、民主党の下院奪還を後押しした経緯がある。

ワシントンの米議会

原題:Democrats Concede Shutdown Fight Without Health Care Win in Hand(抜粋)

--取材協力:Jack Fitzpatrick、Maria Paula Mijares Torres、Maeve Sheehey、Jamie Tarabay.

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