(ブルームバーグ):7日の米株式市場ではS&P500種株価指数が小反発。政府機関閉鎖の解除に向けた合意が近づいているとの期待が高まり、取引終盤に上げに転じた。今回の政府閉鎖は米国史上最長となっている。
S&P500種の構成銘柄では約400銘柄が上昇した。上院民主党は失効が迫る医療保険補助金の延長要求を1年間に修正して譲歩したが、上院共和党はこれを拒否した。ただ、両党がやり取りしているという事実自体が前向きな一歩と受け受けとめられた。ナスダック100指数は一時2.1%下落したが、下げの大半を埋めた。
経済統計を公表する連邦政府機関が閉鎖される中、雇用統計は7日に発表されなかった。22Vリサーチが実施した調査によると、労働市場の減速が市場にとって最大のリスクとされており、リスク資産や債券利回りが労働市場に関するニュースに極めて敏感に反応している理由を物語っている。
米ミシガン大学が発表した11月の消費者マインド指数は、約3年ぶりの水準に低下した。政府機関の閉鎖が景気見通しを暗くしたほか、物価高で家計見通しも悪化した。
トレードステーションのデービッド・ラッセル氏は「政府閉鎖は長引けば長引くほど、その影響が一般市民の生活にも広がるため、さらなるリスク要因となる」と述べた。
ネーションワイドのマーク・ハケット氏は「今週の下落は、成長懸念や高バリュエーションにかかわらず、過熱気味だったAI銘柄主導の上昇に現実味が戻った結果であり、ファンダメンタルズの崩れというより、フロス(泡)が消えたという方が近い」と語った。

BMOキャピタル・マーケッツのイアン・リンジェン氏は「たとえワシントンで政府機関の再開に向けた進展があり、合意に至ったとしても、経済データのゆがみは当面残るだろう」と述べた。
GDSウェルスマネジメントのグレン・スミス氏は「政府閉鎖のため7日の雇用統計発表はなかったが、民間の雇用者数や解雇に関するデータは十分にそろっており、労働市場の冷え込みを示している」と指摘。「この冷え込みが12月の利下げ、さらには2026年初めにかけての利下げ継続の可能性を支えている」と語った。
プリンシパル・アセット・マネジメントのシーマ・シャー氏は、経済成長が2026年にかけてトレンド水準へと減速したとしても、経済全体はなお上向きの軌道にあるとの見方を示した。「より大きな懸念、そしてFRBの議論の中心となるのは労働市場の健全性だ」と述べた。「雇用の悪化が加速するのを防ぐため、FRBは利下げを継続するとみられる。市場の楽観的な見方の多くは、当局が一定の下支えを維持するという前提に依拠している」と語った。
国債
米国債相場は下落。来週の10年債や30年債の入札を控え、長期債を中心に売りが優勢になった。
今週は労働市場の健全性を巡り強弱まちまちの民間指標が発表され、強気派と弱気派の攻防に決着がつかなかった。
ブラックロックでシステマチック・マルチストラテジー・ファンドの運用を担当するジェフ・ローゼンバーグ氏は「代替データや民間データの多くは、政府閉鎖前の見方、つまり労働市場の減速を裏付けている」とブルームバーグテレビジョンで述べた。「これらの情報がそろうと、方向性は一つに定まる。12月にFRBが緩和サイクルを継続する確率が70%に達するということだ」と語った。

外為
外国為替市場では、ブルームバーグのドル指数が3日続落。米政府機関の閉鎖が空の便に影響を及ぼし始めたことに加え、米消費者マインド指数が約3年ぶりの水準に低下したため、ドル売りが優勢になった。カナダの雇用統計が予想を上回ったため、カナダ・ドルは上昇した。

円は対ドルで1ドル=153円台前半を中心に軟調となった。米民主党の提案が伝わると、153円59銭まで下げた。
三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)のアナリストは、米国の人工知能(AI)銘柄およびハイテク株に一段の調整圧力がかかれば、インフレリスクが和らぎ、利下げ期待が高まることでドルが圧迫される可能性があると指摘。これにより、自民党総裁選後に弱含んだ円が反発する可能性があるとの見方を示した。
MUFGは円買い・ドル売りを推奨、目標水準は148円50円、損失確定の水準は156円としている。
原油
原油先物相場は反発。市場では欧米の対ロシア制裁が供給に与える影響と、世界的な供給過剰懸念の両にらみが続いている。ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)原油先物は週間ベースでは下落。
トランプ米政権がロシア産原油への締め付けを強化しているのを受け、エネルギー取引大手ガンバー・グループはロシア石油大手ルクオイルから外国資産を取得する計画を撤回した。これら資産には油田権益などが含まれるが、その行方は不透明だ。
業界関係者によると、米国がロシアの大手石油2社に科した新たな制裁措置が市場に影響を及ぼし始めている。特にディーゼル燃料ではここ数日で価格が急伸しており、先物の限月間スプレッドも供給逼迫(ひっぱく)を示唆している。
WTI原油の先物期近2限月の価格差であるプロンプトスプレッドは6日、今年2月以来の水準に縮小した。BOKファイナンシャルのトレーディング担当シニアバイスプレジデント、デニス・キスラー氏は「市場がコンタンゴ(順ざや)に転じれば、原油市場では売りを仕掛ける弱気筋が増える可能性がある」と述べた。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物12月限は、前日比32セント(0.5%)高の1バレル=59.75ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント1月限は25セント(0.4%)上げて63.63ドル。
来週は国際エネルギー機関(IEA)や石油輸出国機構(OPEC)などが相次いで発表する報告書に、市場の注目が集まりそうだ。
金
金相場は反発。ミシガン大調査で米経済を支える消費者のマインド悪化が示され、安全資産としての金の需要が高まった。
経済指標の発表を受けて国債利回りとドルが下落したことも、利息を生まない金の上昇を後押しした。
スポット価格はニューヨーク時間午後2時15分現在、前日比31.10(0.8%)高の1オンス=4008.31ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物12月限は、18.80ドル(0.5%)高の4009.80ドルで引けた。
原題:S&P 500 Erases Slide on Hopes Shutdown Is Near End: Markets Wrap(抜粋)
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