米OpenAIは、人工知能(AI)インフラのコストを引き下げるため、国内半導体業界支援法(CHIPS法)に基づく税額控除の見直しをトランプ政権に求めている。同社は業界全体によるAI向けデータセンター整備を政府が支援する方法を模索している。

同社の最高グローバル業務責任者、クリス・レハーン氏は、ホワイトハウス科学技術政策局(OSTP)のクラツィオス局長宛てに書簡を送付。現行の半導体関連の35%税額控除をAIデータセンターやAIサーバー製造業者、変圧器やそれに使用される特殊鋼などの電力網関連部品にも拡大するよう、政権と議会の連携を提案した。書簡は10月27日付で、同社がオンラインで公開している。

レハーン氏は書簡で、税額控除の対象拡大により「実質的な資本コストが下がり、初期投資のリスクを軽減し、民間資金を呼び込んで、ボトルネックの緩和と米国でのAIインフラ整備の加速につながる」と論じた。

この書簡はこれまでほとんど報道されていないが、対話型生成AI「ChatGPT」を手がけるOpenAIがAI分野における高額投資リスクの緩和で政府が果たすべき役割をどのように捉えているかを示す内容となっている。

同社は単独でデータセンターや半導体向けに1兆4000億ドル(約215兆円)を投資する計画を掲げ、一段と高度なAIシステムの開発と技術の普及拡大を目指している。まだ黒字化していない同社はこうした多額の支出計画を支えるため、創造的な資金調達手法を追求し、その一部は「還流」との批判も招いている。

サラ・フライアー最高財務責任者(CFO)は先週、資金調達を可能にする保証を裏付ける役割を米政府が果たす可能性に言及し、一部の業界関係者の懸念を招いた。フライアー氏とサム・アルトマン最高経営責任者(CEO)はその後、OpenAIとしてそのような保証は要請していないと釈明した。

ホワイトハウスのOSTPの担当者にコメントを要請したが、返答は得られていない。

OpenAIはこのほか書簡で、AI産業全体の「製造業者」を対象に、政府が助成金、費用分担契約、融資、融資保証を実施するよう提言した。具体的にどのような企業を指すかは明示していない。

同社はこの種の財政支援が、銅やアルミニウム、電磁鋼板といった分野で中国が「市場をゆがめている」ケースに対抗する手段となると指摘。また、変圧器など電力網の重要部品に対する直接的な資金支援は、供給までのリードタイム短縮にもつながると説明した。

OpenAIが書簡で言及した「先端製造投資税額控除(AMIC)」は、もともと2022年のCHIPS法に盛り込まれた制度だ。議会が今年7月に可決した包括税制法案の一部として、その控除率は25%から35%に引き上げられた。

原題:OpenAI Asks US to Expand Chips Tax Credit to AI Data Centers (1)(抜粋)

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