米政府機関の一部閉鎖に伴うデータ不足で労働市場の構造的な弱さが見えにくくなっており、データ公表が再開されればドルを押し下げる要因になるとの見方が為替ストラテジストから出ている。

ドルは10月、月間ベースで今年2番目に好調だった。政府閉鎖で経済指標の発表がほとんどなかったことが背景にある。

モルガン・スタンレーでG10通貨戦略責任者を務めるデービッド・アダムス氏はインタビューで、「米労働市場に関するデータ不足によって投資家は雇用の構造的減速という流れを無視できている」と指摘。「雇用データが持続的な採用ペース鈍化を示すほど、投資家は実質・名目金利を通じてこの構造的な力を織り込み、結果的にドルを押し下げることになる」と述べた。

ブルームバーグ・ドル指数は6日に続落し、10月半ば以来の大幅安となった。民間の雇用データが労働市場の冷え込みを示したことが手がかり。この統計を受け、市場で利下げ観測が強まった。ドル指数は年初来で約6.8%下落しており、上期の下落率は数十年ぶりの大きさだった。

閉鎖前に発表された8月の米雇用統計では非農業部門雇用者数の伸びが大きく鈍化。失業率は上昇し、2021年以来の高水準となった。その後の雇用見通し改善を裏付けるものはほとんどなく、投資家は民間データや企業決算を注視している状況だ。

三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)のデレク・ハルペニー氏も、新たなデータが公表されればドル売りが再燃すると予想している。「これまでに得られた雇用データの悪化を踏まえると、過去の事例から考えて労働市場の急激な改善は見込めない」と述べ、消費者信頼感指数や米供給管理協会(ISM)の雇用指数なども雇用の弱さを示しているとした。

ハルペニー氏は、ドル売りが特に対ユーロで顕著になる可能性があるとし、年末までに1ユーロ=1.20ドルと、4年強ぶりの水準になるとの見通しを示した。「12月は季節的にユーロに追い風が吹く月だ。年末にかけて大きな動きがあるかもしれない」と指摘した。

原題:Morgan Stanley, MUFG See Dollar Drop Once US Key Data Void Ends(抜粋)

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