電気自動車(EV)メーカーの米テスラが、イーロン・マスク最高経営責任者(CEO)に対する1兆ドル(約154兆円)規模の報酬パッケージを認めるよう株主に訴える活動が最終局面を迎えている。確実なのは、マスク氏がその結果を非常に個人的なものとして受け止めるだろうという点だ。

取締役会のロビン・デンホルム会長は先週、ブルームバーグ・ニュースのインタビューでそう語った。マスク氏と直接会話した内容に基づく見解を示した。

株主がこの提案に反対票を投じれば、マスク氏は「自らのリーダーシップに対する否定的なサインと受け止めるだろう」とデンホルム氏は述べた。否決された場合、マスク氏はテスラを去るか、あるいは経営の第一線にとどまらない可能性が高いと警告した。

もっとも1年前にはうまくいった前例がある。2024年6月、数カ月前に裁判所が無効と判断したマスク氏の株式報酬について、再承認するかどうかを問う株主投票では、マスク氏は自分を抑えきれなかった。投票締め切りの数時間前、提案が大差で可決される見込みを示す途中経過をX(旧ツイッター)に投稿し、感謝のメッセージの前後にハートの絵文字を添えた。

今回の巨額報酬案について株主投票期限は米東部時間の深夜0時。承認されれば、マスク氏の持ち株比率は今後10年以内に25%に達する可能性がある。ただその水準に到達するには、テスラの時価総額を大きく拡大するとともに、低迷している自動車事業を立て直し、立ち上げ段階にあるロボタクシーやロボティクス事業を軌道に乗せる必要がある。

テスラ取締役会はこの報酬計画がマスク氏の関心を数多くの他の事業ではなくテスラにとどめるために必要だと主張している。デンホルム氏は数週間にわたり、この報酬案の正当性を機関投資家やメディアに訴えてきた。またマスク氏自身も計画承認を株主に訴えている。

テスラの強固な個人株主層もマスク氏を支持している。反対票を投じる証券会社から資金を移すよう投資家に呼びかける著名インフルエンサーも複数いる。

こうした動きを受け、投資家はたとえ今回の報酬案に賛成しなくても、ほぼ選択の余地がない状況と企業統治の専門家は指摘する。

ボストン・カレッジ法科大学院のブライアン・クイン教授は「理性的なテスラ株主なら、苦渋の選択を迫られている」とした上で、今回の投票は「事実上、賛成を迫られるような投票だ」と述べた。

原題:Tesla Shareholders Cast Votes With Musk’s Future on the Line(抜粋)

--取材協力:Loukia Gyftopoulou.

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