(ブルームバーグ):ゴールドマン・サックス・グループとバンク・オブ・アメリカ(BofA)は、円が対ドルで155円に接近しているものの、日本当局による為替介入の可能性は当面低いとの見方を示した。通常介入が行われる条件が「まだ満たされていない」と分析している。
ゴールドマンのストラテジスト、カレン・ライヒゴット・フィッシュマン氏は3日付のリポートで、円は「特に弱い水準にあるようには見えない」と指摘。最近の円安は主に日本の財政リスクプレミアムの再評価と短期的な日本銀行の金利予想の見直しによって引き起こされていると説明した。
BofAの山田修輔氏も同様の見解を示し、ドル・円が155円を上回っても、過度なボラティリティーや投機的ポジションの積み上がりがない限り、直ちに介入が実施される可能性は低いと分析した。
円は10月に対ドルで約4%下落し、G10通貨の中で最も弱いパフォーマンスとなった。下落の背景には、財政拡張と緩和的な金融政策に傾斜する高市早苗首相の姿勢がある。また日銀が先週開催した金融政策決定会合で政策金利を据え置き、植田和男総裁が将来の利上げについて明確な指針を示さなかったことも円安を後押しした。
こうした円安の進行を受け、当局者による口先介入が見られている。片山さつき財務相は10月31日、閣議後会見で「投機的な動向も含めて、為替市場における過度な変動や無秩序な動きについて高い緊張感を持って見極めている」と語った。
日本の財務省が前回為替市場に介入したのは2024年で、当時は1ドル=157円99銭、159円45銭、160円17銭、161円76銭付近で実施された。その後、当局は1年以上にわたり市場介入を行っていない。
ゴールドマンによると、財務省は長期証券を売却せずに約2700億ドル(約41兆6000億円)の介入可能資金を確保しているとみられ、22年および24年の介入規模に匹敵する対応が可能だという。
フィッシュマン氏は、重要な米経済指標の発表が乏しく成長見通しが疑問視されない場合や、日本国内で解散総選挙の可能性に政治的関心が戻る場合には、円がさらに下落する余地もあると指摘した。
一方、長期的には、ヘッジコストの低下とドル安を背景に円は徐々に上昇すると予想。米労働市場のデータが悪化すれば、その動きが加速する可能性もあるという。
ただし、日本で予想を上回る財政刺激策が実施され、日銀の金融引き締め余地を制約すると受け止められた場合や米経済の再加速が見られた場合は、この見通しが崩れる可能性もあるとした。
原題:Goldman, BofA See No Imminent Intervention Risk as Yen Nears 155(抜粋)
(BofAの見解を追加して更新します)
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