(ブルームバーグ):ヘッジファンドは、年末までに円が1ドル=160円近辺まで下落すると見込んでいる。米連邦準備制度理事会(FRB)と日本銀行の金利政策の方向性の違いが背景にある。
30日の外国為替オプション市場では、ドル高・円安が進むと利益を得られるコールオプションの取引が急増した。米国証券振り替保管機構(DTCC)のデータによると、想定元本で1億5000万ドル(約230億円)以上のコールが取引され、ドル安で利益が出るプットの約6倍に達した。
ドルは同日、円に対し2月以来の高値をつけた。日本銀行は政策金利を据え置き、次の利上げ時期についても明確な手がかりを示さなかった。市場は、12月に0.25ポイントの利上げが行われる確率を約45%織り込んでいるが、本格的な利上げは来年3-4月頃になるとの見方が優勢だ。
これに対し、FRBは29日に利下げを実施したものの、12月の追加利下げを保証するものではないとパウエル議長が強調した。
こうした政策の方向性の違いを背景に、政治・経済要因による大きな市場変動から利益を狙うマクロ系ヘッジファンドの間では、ドル・円について「1カ月後に157円、年末までに158-160円のレンジを目指す」との見方が広がっていると、ノムラ・インターナショナル(ロンドン)の為替オプション上級トレーダー、サガル・サンブラニ氏が述べた。
31日の東京時間の取引では、ドル・円は153円65銭-154円17銭のレンジで推移している。
サンブラニ氏は「実現ボラティリティーが堅調に推移していることもあり、この取引には当社のマクロ部門の顧客を中心にデジタルオプションを通じて多くの参加があった」と述べた。「また、160円という重要水準に近づいた際に中銀が介入する可能性を見込み、プレミアムを抑える目的でRKO(リバースノックアウト)型の構造も利用されている」と語った。
リバースノックアウト・オプション(RKO)は、特定の水準を超えると権利が消滅する仕組みのため、通常のコールオプションよりも割安に取引できる。デジタルオプションは、満期時に為替レートがあらかじめ定めた水準を超えた場合に固定額の支払いが行われる戦略を指す。
ドル・円160円到達の可能性を見ているのはオプション市場参加者だけではない。アムンディは、ドル・円が155円を突破すれば、160円近辺までのレンジで推移する可能性があると予想している。
原題:Hedge Funds Are Betting Yen Will Slide to 160 by Year’s End(抜粋)
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