(ブルームバーグ):エヌビディアのジェンスン・フアン最高経営責任者(CEO)は今週、韓国を訪問し、サムスン電子や現代自動車グループなど主要韓国企業への人工知能(AI)半導体チップ供給に関する新契約を発表する予定だ。米中貿易摩擦の中で、中国市場から締め出されつつあるエヌビディアにとって、新たな市場拡大の好機になりそうだ。
韓国財閥にとっては、エヌビディアとの関係強化は、AIモデルの訓練と運用に不可欠な画像処理装置(GPU)の安定供給につながる。
関係者によると、フアン氏はアジア第4位の経済大国である韓国との関係深化を図っている。韓国には、世界でのメモリー半導体チップの供給で中核的役割を担い、主要なAIコンピューティング拠点となる野心がある。サムスンや現代自動車に加え、エヌビディアはSKグループにも半導体チップを供給する計画だ。SKグループは韓国に7兆ウォン(約7400億円)規模のAIデータセンターを建設予定で、子会社に半導体メーカーのSKハイニックスを擁する。
フアン氏は24日、韓国・慶州で開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に出席する前に、韓国企業との提携を発表する見通しだという。
エヌビディアと現代自動車グループはコメントを控えた。サムスンとSKの担当者は、今のところコメントの求めに応じていない。
トランプ米大統領は28日、アジア訪問中にフアン氏とも会う予定だと述べた。匿名を希望する米国の当局者によると、トランプ政権は29日、AIや量子コンピューティング、バイオテクノロジー、第6世代(6G)無線技術での協力強化を目的とした韓国との包括的合意に署名する予定だ。この当局者は、合意に基づくプロジェクトに関わる可能性のある企業については明らかにしなかった。
AIインフラ投資が急拡大し、今後数年で1兆ドルを超えると予想される中、エヌビディアはその中心的存在だ。OpenAIからオラクルまで、業界のリーダー的企業は、AI時代を支えるデータセンターの構築を急いでいる。主流となるAIアプリケーションやサービスが今なお存在しないことから、投資ラッシュとハイテク株バリュエーション急騰を、ドットコムバブルと比較し懸念する向きもある。
影響力を拡大するため、エヌビディアはフアン氏が「AI主権」と呼ぶ構想を提唱し始めた。国家がAIという新興技術において、独自の能力を構築すべきだという考えだ。韓国は、2030年までに最大20万台の高性能GPUを確保するなど、コンピューティングインフラへの大規模投資を計画している。取り組みには、約30億ドルかかる可能性がある。
中国市場からほぼ締め出されているエヌビディアは、代替市場への進出をさらに進めたい考えだ。中国政府は国内企業に対し、エヌビディアのワークステーション向け半導体「RTX Pro 6000D」の発注停止を指示したほか、企業や機関にも同社のH20チップの使用を控えるよう促した。フアン氏は今月、中国市場でのエヌビディアのシェアが、ピーク時の95%からゼロに落ち込んだと明かしている。
原題:Nvidia CEO Prepares to Unveil AI Deals With Samsung, Hyundai(抜粋)
--取材協力:Debby Wu.
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