(ブルームバーグ):ベンチャーキャピタルのセコイア・キャピタルは、ウォール街の将来を見据え、銀行業務の効率化を目指す人工知能(AI)スタートアップ、ロゴ・テクノロジーズ(Rogo Technologies)への出資を主導している。事情に詳しい関係者が明らかにしたもので、ロゴの評価額は7億5000万ドル(約1140億円)に達する見込みだ。
ニューヨークを本拠とするロゴは、投資銀行業務の一部を支援するソフトウエアを開発しており、最終的にはアナリスト業務を代替できるAIの実現を目指している。今回の調達ラウンドで、ロゴの評価額は前回ラウンドに比べ2倍以上に跳ね上がった。前回は、スライブ・キャピタル主導で5000万ドルを調達した。
今回の資金調達はまだ完了しておらず、関係者によると5000万-1億ドルを調達する見込み。情報が非公開であることを理由に、関係者はいずれも匿名を条件に語った。ロゴとセコイアの広報担当者はコメントを控えた。
ロゴは2022年、元ラザードのバンカー、ガブリエル・ステンゲル氏、JPモルガン・チェース出身のジョン・ウィレット氏、ギルダー・ガニョン・ハウ(Gilder Gagnon Howe & Co.)のソフトウエアエンジニアだったトゥマス・ラカイティス氏によって設立された。
若手バンカーの多くは、合併・買収(M&A)やレバレッジドバイアウト(LBO)の準備に向けて、週80時間以上をパワーポイント資料や詳細な財務モデルの作成に費やす。ロゴは、自社のソフトウエアがこの作業を大幅に短縮できると説明している。同社のAIは、投資銀行業務の中核をなすスライド資料の作成に加え、新規株式公開(IPO)関連の書類作成や、取引の基盤となる財務モデル構築も支援する。
共同創業者のガブリエル・ステンゲル氏は「AIがウォール街で主流化したのは周知の事実だ。AIを使って若手の生産性を高められる企業は、そうでない企業に対して大きな優位性を持つだろう」と今年のインタビューで語った。
ロゴのウェブサイトによると、顧客には投資会社タイガー・グローバルや、投資銀行のラザード、モーリスなどが含まれる。
対話型AI、ChatGPTを開発したオープンAI(OpenAI)も、金融業務をこなすAIモデルの訓練を進めている。スタートアップのアンソロピックも、銀行業務や資産運用業界向けにエクセル対応ツール「Claude for Excel」など新製品を導入したと、28日のブログ投稿で明らかにした。
また、JPモルガン・チェースは、社員が文書作成や要約、スプレッドシート上での複雑な問題解決を行うのを支援するAI搭載チャットボットを独自に開発している。
一方で、このようなAIツールが、若手バンカーが業務の基本スキルを身につける機会を奪うのではないかとの懸念もあるが、ステンゲル氏はこうした見方について7月にブルームバーグに「ロゴはバンカーがより速く成長できるよう支援している」と語った。
原題:Sequoia Invests in AI Tool That Could Replace Junior Bankers(抜粋)
--取材協力:Shona Ghosh.
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