(ブルームバーグ):金への関心の高まりを背景に、商社やヘッジファンド、銀行が専門の金トレーダーを積極的に採用している。これまでニッチ市場だった金取引で人材争奪戦が激化し、報酬パッケージが押し上げられている。
関係者によると、資源商社大手トラフィグラ・グループとガンバー・グループは今年、貴金属トレーダーのチームを採用した。競合のIXMやマーキュリア・エナジー・グループも同分野での採用活動を進めている。
ヘッドハンターや業界関係者によると、ヘッジファンドや銀行、精錬業者などの産業界も、貴金属分野への新規参入や既存チームの拡充を目指しているという。
金市場はロンドンを中心に毎週、数千億ドル規模の取引が行われるが、従来はJPモルガン・チェース、HSBCホールディングス、UBSグループなど少数の銀行が少人数体制で主導してきた。今年に入り金価格が急騰する中、新規参入者は経験豊富な人材が限られる中での採用を強いられている。
オーレックス・グループのコモディティー担当ヘッドハンター、アレックス・カー氏は「貴金属トレーダーが脚光を浴びている」と指摘。「もはや銀行だけではない。ヘッジファンドも商社も貴金属トレーダーやポートフォリオマネジャーを探している」と述べた。
この人材争奪戦は、今週末に京都で開幕したロンドン地金市場協会(LBMA)のカンファレンスでも主要な話題となりそうだ。
今年の貴金属市場では価格高騰に加え、大規模な裁定取引やロンドン市場での銀急騰など、さまざまな収益機会が生まれている。市場調査会社クリシル・コアリション・グリニッジのデータによると、主要銀行12行が2025年1-3月(第1四半期)に貴金属取引で得た収益は合計5億ドル(約764億円)に達し、過去10年で2番目に高い水準となった。これは過去10年間の四半期平均収益の約2倍に相当する。
しかし、長年にわたり銀行のトレーディング部門で比較的軽視されてきた結果、貴金属価格を動かすマクロ要因だけでなく、実際の保管や輸送の実務に精通した人材の層は薄くなっている。
コモディティー専門ヘッドハンター、HCグループのニコラス・スヌーク氏は「人材プールが非常に小さく、市場全体が薄い。特に現物取引の貴金属トレーダーはさらに少ない。近年、多くの人材が引退し、新卒者はテック分野を志向しているためだ」と話す。
これまで限られた銀行の間でしか転職先がなかった貴金属トレーダーに対し、いまや商社やヘッジファンドが高待遇で積極的に勧誘している。カー氏によると、現物系商社の金トレーダーは銀行勤務時より2-3倍高いボーナスを受け取るケースもあるという。
「貴金属トレーダーが他のコモディティートレーダー並みに報酬を得られるのは、今回が初めてのことだ」とカー氏は述べた。

原題:Gold Trader Hiring Spree Drives Up Pay as Bullion Market Booms(抜粋)
--取材協力:Sybilla Gross.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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