韓国の李在明大統領は、同国による総額3500億ドル(約53兆5900億円)規模の対米投資計画を巡り、両国が「全て」の主要項目でなお難航していることを明らかにした。トランプ米大統領との首脳会談までに貿易合意を締結できない可能性を示唆した。

24日に行われたブルームバーグ・ニュースとの単独インタビューで「投資方法、金額、投資時期、投資に伴う損失負担、利益の配分など、これら全てが依然として争点だ」と指摘。「米国は当然ながら自国の利益を最大化しようとするだろうが、それが韓国に壊滅的な結果をもたらすようなことがあってはならない」と述べた。

両首脳は韓国・慶州で開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に合わせて29日に会談する予定。投資計画は7月に骨格が示された貿易合意の中核をなすものだが、交渉の遅れにより、韓国の自動車メーカーは競争上、不利な立場に置かれている。

韓国の李在明大統領がブルームバーグテレビジョンで語る

李氏と韓国政府高官は、依然として意見の隔たりが大きいと指摘している。一方、トランプ氏はアジア歴訪に向けてワシントンを出発する際、記者団に対し、韓国との合意は「かなり近づいている」と語った。

APEC首脳会議に合わせ、トランプ氏は中国の習近平国家主席とも会談する予定で、韓国経済や世界貿易全体にも影響を及ぼすとみられている。

米韓両政府は投資基金を巡る最終合意に向けて、ぎりぎりの交渉を続けている。韓国の金民錫首相は先月、ブルームバーグ・ニュースの単独インタビューで米国と合意した投資規模が韓国の外貨準備高の70%超に上ると説明し、米国との通貨スワップ協定がなければ韓国経済が深刻な打撃を受けると指摘した。

また、具潤哲企画財政相は先週、米国との交渉の焦点となっているのは通貨スワップではなく、韓国が約束した3500億ドル規模の対米投資の構造だと語った。

李氏は「協議は継続中で意見の相違はあるが、遅延は必ずしも失敗を意味するわけではない」とし、「少し忍耐強く見守ってほしい」と語った。

李氏が時間的猶予を求める中、韓国の自動車メーカーは米国から25%の関税を課される一方、日本の自動車メーカーは日米が先月、覚書を交わしたことで15%に軽減されている。それでも李氏は日本との比較を退け、欧州連合(EU)がトランプ氏と交渉した過程からも学べるとの見方を示した。

李氏は「韓国は米国の同盟国であり友人だ。全ての当事者が納得できる合理的な結果に到達できると信じているし、そうすることが必要だ」と語った。

ビザ問題を巡っては「そう遠くない時期に」解決すると期待していると言及。「労働者たちが深刻なトラウマを負い、戻ることを望まない労働者もいると聞いている。安全と合理的待遇が確保されない限り、米国での工場建設はかなり遅延する可能性がある」と語った。

一方、安全保障分野に関しては「在韓米軍が朝鮮半島の平和と安全を維持する上で極めて重要なのは明らかだ」とした上で、「国際社会の現実として、われわれが在韓米軍の運命を決定することはできない」と指摘。

また、外的要因にかかわらず、韓国自身が北朝鮮を抑止できる体制を整える必要があるとし、防衛費を国内総生産(GDP)比2.3%から3.5%に引き上げる計画は、米国の要請ではなく、自主国防という基本方針に基づくものだと強調した。

原題:US-Korea Fund Stuck on Key Points Ahead of Trump Visit, Lee Says(抜粋)

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