日本銀行の高田創審議委員は20日、2%の物価安定目標は既におおむね達成した局面であり、利上げの「機が熟した」との見解を示した。広島市で行った講演内容を日銀がホームページに公開した。

高田氏は、企業の賃金・価格設定の積極化など物価が上がらないノルム(慣行)が転換し、「既に『物価安定の目標』実現がおおむね達成した局面」とみている。関税政策導入後も米経済が底堅く推移し、米利下げを受けても円高が回避されていることなどから、米経済や為替変動のリスクも「利上げの制約にはならない」と語った。

その上で、物価が予想以上に上振れするリスクも念頭に置く必要がある中、「2%を超えるヘッドラインの物価水準にも注目した対応も重要だ」と主張。「利上げに向けた機が熟した」と判断し、前回の9月金融政策決定会合で利上げを提案したと説明した。

9月会合では高田氏と田村直樹審議委員が政策維持に反対し、0.75%程度への利上げを提案した。日銀内での利上げ議論の高まりを受けて高まった早期利上げ観測は日本の政治情勢の混乱を受けて後退しているが、高田氏は改めて利上げの必要性を主張した形だ。

講演を受けて債券先物が下げ幅を拡大し、円は対ドルで一時150円台半ばまで上昇した。日銀は29、30日に次回会合を開く。

米関税政策を巡っては、危機意識の醸成で世界的に「財政金融政策が同時に緩和方向に傾き、ベクトルがそろう異例な環境が生じている」と指摘。これに伴い想定外の経済底上げとインフレ圧力が生じる可能性に留意したいとし、夏場以降の株高は「世界的な金融財政政策によるサポートを受けている可能性もある」と述べた。

国債買い入れ

日銀は9月会合で保有する上場投資信託(ETF)の売却も決めた。既に国債買い入れは着実に金額を減らしており、バランスシートの正常化も進めている。

高田氏は国債買い入れに関し、市場機能の回復の観点から購入を減らして正常化に向かうとともに、「緩和の度合いを調整する観点からマネーストックの管理やバランスシートの縮小も検討する段階にある」と説明。もっとも、縮小プロセスは「慎重かつ時間をかけた対応も必要」と語った。

(発言の詳細を追加して更新しました)

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