(ブルームバーグ):米ワシントンを訪問中の日本銀行の植田和男総裁は16日(現地時間)、経済・物価見通しが実現する確度が高まれば金融緩和の度合いを調整していくと述べた。10月末の金融政策決定会合に向けて、情報収集に当たる考えも示した。
主要7カ国(G7)、20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議閉幕後の記者会見で述べた。
植田総裁は、政策運営の基本姿勢として「経済・物価見通し、それを巡るリスク、そして見通しの確度、こういうものに従って金融政策を決定していく」と説明した。
続いて「見通しの確度が上がっていけば、その度合いに応じて適宜『金融引き締めの度合い』を調整していくという姿に全く変わりはない」と話したが、日銀がその後「金融緩和の度合い」に修正した。

前回の9月金融政策決定会合における日銀内での利上げ議論の広がりを受けて市場で高まっていた早期利上げ観測は、政治情勢の混乱を背景に足元で後退している。29、30日の次回会合を控え、政治情勢も踏まえた植田総裁の発言が注目されたが、従来の基本姿勢の説明にとどまった。
自民党総裁に高市早苗氏が選出されて以降、公明党の連立与党からの離脱や、首相指名選挙に向けた与野党による多数派形成の動きなどもあり、情勢は日々流動化している。金融市場も不安定化しており、9月会合後に一時70%程度に高まった市場の10月会合での利上げ予想は足元で10%台に低下している。
記者会見では政治の不安定化が金融政策運営に与える影響についても問われたが、明言は避けた。
国際通貨基金(IMF)アジア太平洋局副局長のナダ・シュエイリ氏は15日、ブルームバーグのインタビューで「日本の政治情勢を注視しており、毎日のニュースで進展を確認している」としつつ、政治の動きに関わらず「日銀はこれまでと同様にデータ・ディペンデントである必要がある」と話した。
レジリエント
記者会見には、G20会合で加藤勝信財務相の代理を務めた三村淳財務官も同席した。今回のG20では世界経済や国際金融、アフリカの成長などが議題となった。
米国を含めた世界経済について、植田総裁はこれまでのところ「レジリエント(強じんな)という言葉がぴったりするような底堅さを見せている」と指摘。米国による関税措置の影響が表れるのが遅れていることが要因の一部で、今後その影響が出てくる可能性については「下方リスクとして織り込まざるを得ないというのがいろいろな人の評価だと思う」と語った。
G20の共同声明の発出はなかったが、南アフリカが議長国としての総括文書を取りまとめた。世界経済は2025年上期、「引き続き高い不確実性と複雑な課題に直面しながらも強じんさを示した」とした一方、貿易を巡る緊張などが「金融・物価安定へのリスクを高める恐れがある」との認識を示した。
今月の決定会合は、国内メディアで報じられているトランプ米大統領の来日やアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議が前後に予定されており、政府の外交日程が続く中での開催となる。
(背景を追加して更新します)
--取材協力:横山恵利香、伊藤純夫.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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