(ブルームバーグ):拡張的な金融・財政政策を志向する高市早苗氏が自民党総裁に就任したことで、今後インフレが再加速し、日本株市場では不動産など実物資産を多く保有する銘柄が選好されるとの見方が浮上している。
高市氏の予想外の勝利を受け、株式市場では政策支援が期待できそうな「高市関連銘柄」を探る動きが活発化。防衛関連や核融合のほか、航空宇宙やペロブスカイト太陽電池関連など、まだ事業化されていない技術に関わる銘柄も含めて幅広い業種が物色される展開となった。
しかし、一部の市場参加者の間では、高市銘柄の本命は不動産株などインフレメリットを享受する銘柄だとの読みが広がりつつある。輸入コストの上昇や人手不足を背景に物価上昇率が3%前後と日本銀行の目標を上回って推移する中、高市氏が景気刺激的な政策をとれば、一段のインフレ加速は避けられないとの見立てだ。
三菱UFJアセットマネジメントの友利啓明エグゼクティブファンドマネジャーは、高市氏の政策は「基本的にはインフレを呼び起こす」とみる一人だ。日銀の利上げに反対姿勢を示すなどして金融引き締めを避けるようなら為替の円安が進みやすく、「インフレが確定的だ」と話す。
友利氏は不動産株のほか、建築コスト上昇分の価格転嫁で利益率が改善した建設株などを有望視している。物価高が進めば日銀はいずれ利上げを迫られるとし、足元で軟調な銀行株についても見直し買いが入る可能性があると指摘した。

高市政権がこのまま発足しても、金融・財政政策には不透明な部分も多い。自民党の麻生太郎副総裁や鈴木俊一幹事長らは拡張財政に慎重なスタンスとみられている。衆参両院で少数与党となる中、公明党との連立政権合意に向けた調整は難航。政策を実現できるかどうかは野党の動向にも左右される。
とはいえ、円相場は総裁選後に対ドルで急落し、一時152円台と約8カ月ぶりの円安水準を付けた。日銀の利上げペース鈍化を見込み、低金利の円を調達して金利がより高い通貨を買うキャリートレードの復活機運も生まれており、一段の円安が物価押し上げにつながる展開はあり得る。
また、インフレ恩恵株への投資は、グローバルに広がりつつある通貨価値の下落に備えた「ディベースメント取引」に重なる部分もある。同取引は、公的債務が積み上がった先進国通貨への信認が低下する中、ヘッジ手段として金や暗号資産(仮想通貨)などを買う戦略だ。過去1カ月間で金とビットコインは対ドルでともに10%超の上昇を記録した。
岡三証券の松本史雄チーフストラテジストは、日本では貴金属や仮想通貨などに投資できる機関投資家は少ないとみられ、通貨価値の低下に対するヘッジ手段として株式が選ばれると分析する。
米国の景気減速やトランプ政権の関税政策などを踏まえると、通常の上げ相場で主役となることが多い大型輸出関連株は伸び悩む可能性があると松本氏は指摘。不動産や土地など実物資産を保有する企業のほか、人工知能(AI)ブームに乗る一部のテクノロジー関連銘柄などへの投資を推奨しているという。
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