アクティビスト(物言う投資家)の米エリオット・インベストメント・マネジメントが、住友不動産の株式持ち合い先企業に対して同社株の買い取りを打診していたことが分かった。エリオットは住友不動産にガバナンス改善など企業価値向上を求めている。

事情に詳しい複数の関係者が匿名を条件に明らかにした。エリオットはブロック取引により住友不動産株を市場価格水準で買い取ると書簡で企業側に提案したという。同関係者らによると、接触した企業は合わせて5%程度の住友不動産株を保有しており、一部の企業とは直接交渉も行っている。

交渉を踏まえて実際に取引が行われたかどうかや、交渉の現在の状況はまだ不明だ。エリオットは6月の書簡で住友不動産株式3%以上の保有を明らかにしていた。住友不動産と株式を持ち合う企業にはゼネコンの大林組、清水建設、インフロニア・ホールディングスなどがある。エリオットが具体的にどの企業に接触したかは不明だ。

住友不動産の株価は7日、取引開始直後から値を上げ、一時6.4%高の7315円と上場来高値を更新した。東証株価指数(TOPIX)の同0.7%高を大幅に上回る上昇率となっている。

エリオットの担当者と住友不動産の広報担当者はそれぞれコメントを控えた。大林組、清水建設、インフロニアHDにコメントを求めたが、返答は得られていない。

コーポレートガバナンス(企業統治)改革が進む中で、少数株主の利益軽視や非効率な経営といった観点から株式持ち合いは批判の対象だ。株式の持ち合いが目立つ企業はしばしばアクティビスト投資家からの標的となっている。

関係者の1人は、持ち合い株の一部がエリオットに売却されれば、株主総会で経営陣の選任に反対票を投じる上でのエリオットの影響力が高まると述べた。また、持ち合い先の企業が株式を売却すれば、住友不動産も相手企業の株式売却により得た資金を他の分野に振り向ける余地が生まれる可能性もある。

 

シティグループ証券の三木正士アナリストは英文リポートで、相手企業が持ち合い株を減らすことになれば、住友不動産の経営陣への圧力が高まり、ガバナンスの改善につながる可能性が高いと指摘。その場合、住友不動産も相手の株式を売却する可能性が高く、特別利益の計上や資本の回復がさらに進むとみている。

住友不動産は8月、2000億円の資産売却を計画msg4しており、今後10年間で4000億円の持ち合い株式の売却を目指すと発表した。エリオットはその後、同計画は、十分な野心と緊急性が欠けているとした上で、株式売却計画はあまりにも長期にわたるとのコメントを発表した。

ブルームバーグは3月、エリオットが住友不動産の株式を大量に取得したことを初めて報じた。エリオットは6月、住友不動産に宛てた書簡を公表。この中で自社株買いの拡大や保有不動産の売却、持ち合い株式の解消を求めていた。住友不動産の株価は適切な対応を講じることで少なくとも8000円になるとも主張した。

企業改革が進む中、日本ではアクティビストによる投資が活発化している。ブルームバーグがまとめたデータによると、アクティビストによる昨年の投資件数は過去最多となる146件に上った。4年前と比べて2倍超、米国に次ぐ世界2位の件数だ。

(第8段落にアナリストの見方を追加して更新します)

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