不適切会計疑惑に揺れるニデック創業者の永守重信氏(81)が経営の一線を退くとの発表を受け、同社の株価は企業風土改革が進むとの見方もあって大幅な上昇となった。自らを「太陽よりも熱い男」と称し、猛烈な働きぶりでニデックを巨大企業に育て上げた経営者としては寂しい退場となった。

ニデック株は22日の取引で4営業日続伸となり、一時前週末比7.3%高の2143円を付け、11月11日以来の日中上昇率となった。終値は2091円だった。

ニデックでは今年に入って相次いで不適切会計の疑いが浮上し、9月に設置した第三者委員会により調査が進められている。10月には東京証券取引所から特別注意銘柄指定を受け、年初来では25%以上下落するなどガバナンス体制の懸念も指摘されていた。

ニデックは19日に永守氏が代表取締役とグローバルグループ代表を辞任し、非常勤の名誉会長になると発表した。取締役会議長の役職も外れ、後任には社長兼最高経営責任者(CEO)の岸田光哉氏が就任する。一連の辞任は本人の意向によるものという。

永守氏は声明で、ニデックの企業風土に問題があると指摘されることがあるとした上で、創業者として企業風土も含めて会社を築き上げてきた立場として、「申し訳なく思っている」とコメント。自らが経営から身を引き、岸田氏に「すべて委ねる」ことでニデックが再生できると信じていると述べた。

永守重信氏

シティグループ証券のアナリスト、内藤貴之氏は英文リポートで、市場がこの辞任をどう受け止めるかは分かれるが、永守氏の代表取締役退任が改革を加速させるという見方も出てくるだろうとの見方を示した。一方で、第三者委の回答が得られるまでは、株価の上昇余地は限定的だとみる。

プレハブ小屋で創業

昭和の高度成長期末期の1973年、京都市の片隅の民家にあるプレハブ小屋で永守氏が仲間3人と日本電産として創業したニデックは、モーターの技術力や長時間労働をいとわない営業力を武器にパソコンのハードディスクドライブ(HDD)用モーターなどでシェアを拡大。合併・買収(M&A)も積極的に手掛け、売上高は過去30年間で約36倍になった。

「太陽よりも熱い男」を自認する永守氏は1日16時間、元日の午前以外は休まず働き、酒もたばこもやらずゴルフや夜遊びにも縁がない仕事漬けの生活を送ってきたと過去のインタビューで話している。2014年には日経ビジネス誌の「社長が選ぶベスト社長」で経営への姿勢が評価され、1位に選ばれた。

一方で、短期的な利益に強くこだわるあまり、実現困難な目標を掲げざるを得ない状況が生じ、それに対して従業員が意見ができないといった負の側面も指摘されていた。

こうした中でニデックでは長年にわたり、有価証券報告書で示す「事業等のリスク」に金利や為替、訴訟などと並んで永守氏への依存を挙げてきた。24年3月期の有報ではニデックの継続的な成功は主に創業者である永守氏の「能力と手腕に依存」してきたとした上で、創業精神を受け継いだ新たなリーダーを輩出できなければ業績に影響を与える可能性があるとしていた。

監視機能

しかし、ニデックのガバナンス体制への疑念が広がる中、皮肉にも市場では逆に、永守氏の存在をリスクと見る向きも広がっている。

岩井コスモ証券のアナリスト、斎藤和嘉氏は短期的には悪材料の出尽くしとみる投資家もいるかもしれないが、第三者委の調査が越年(えつねん)する中で「基本的には長期投資家は今日はまだ動かないのではないか」と指摘。永守氏は依然として筆頭株主であり、影響力が残るリスクもあるとした。

企業会計・監査に詳しい青山学院大学の八田進二名誉教授は、第三者委の調査結果が出る前の永守氏の辞任について、不透明な状況を長引かせないために早めに身を引こうと思ったのかもしれないが、「自分の名誉を守るための責任逃れに感じた」と指摘。調査結果が出るまでは責任者であるべきだったと指摘した。「時代の寵児だった人の退場の仕方としては寂しい」と述べた。

また、永守氏の辞任だけでは企業風土改革は十分ではなく、今回監視機能が働いていなかったことが鮮明となった取締役会のメンバーを全て変えるくらいの対応が必要だとの考えを示した。

(識者コメントを追加して更新します)

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