自民党総裁に高市早苗氏が選出され、株式市場では現預金をため込んだキャッシュリッチ企業に対する圧力が強まる可能性があるとの見方が出ている。

岡三証券の内山大輔シニアストラテジストらは6日付リポートで、高市氏が2021年の著書で「現預金課税」のアイデアを示したほか、昨年の総裁選期間中にコーポレートガバナンス(企業統治、CG)コードの改訂で内部留保の使途を明示させるべきだと主張したことを指摘。「企業の手元資金活用に対する問題意識は一貫して強いという印象」だと述べた。

金融庁はCGコードの改訂で、企業に対し現預金を投資などに有効活用できているかの検証や説明責任の明確化を求めることを検討している。内山氏らは、高市氏の考えは金融庁の方針と整合的だとし、政策的な後押しが強まればアクティビスト(物言う株主)による改革圧力が増し、投資テーマとして「キャッシュリッチ」が再び注目される可能性があると分析した。

野村証券の中川和哉ESGチーム・ヘッドも、高市氏は基本的に「安倍政権の路線と近く、現預金の検証を含めてCGコードの見直しはしっかり進める」とみている。

日本企業の現預金を巡っては、海外投資家などから過大だと指摘されてきた。23年の東京証券取引所による株価純資産倍率(PBR)改善要請などを受けて株主還元は増えたが、企業と投資家にはなお認識の差がある。生命保険協会の調査によると、企業の67%が手元資金の水準を適正とみている一方、投資家の82%は余裕のある水準と考えている。

CGコード改訂の議論では、経営資源の配分先として設備投資や研究開発、人的投資などが念頭に置かれている。野村証券の中川氏は企業がキャピタルアロケーションの方針を示し、株主還元に加えて成長投資が拡大すれば「日本株にとって中長期でポジティブな要素だ」と述べた。

岡三証券のスクリーニングによると、総資産に対するネットキャッシュ比率が高く、営業キャッシュフローに対する投資キャッシュフローの比率が80%未満の企業は塩野義製薬やシマノ、スクウェア・エニックス・ホールディングス、東洋水産などがある。

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