(ブルームバーグ):財政・経済政策を左右する自民党総裁選を控え、日本銀行による月内利上げ観測がくすぶる中、市場では10年国債入札への不安感が漂っている。
1日の企業短期経済観測調査(日銀短観)は利上げを妨げない内容だった。ハト派の位置付けだった日銀の野口旭審議委員は週初の講演で利上げの必要性に言及。9月の日銀金融政策決定会合では委員2人が利上げを提案している。金融市場(OIS)市場では月末会合での利上げ確率が6割前後だ。すでに利上げを先取りする形で新発10年債利回りは1.6%超と2008年以来の高水準にある。

この利回り水準が10年国債入札で一部投資家をひきつける一方、重要なイベントがめじろ押しで投資家の購入意欲を押さえる可能性がある。午後に日銀の内田真一副総裁、週末には植田和男総裁の発言機会、4日には自民党総裁選があり、米政府機関の一部閉鎖の影響も懸念される。
三井住友トラスト・アセットマネジメントの稲留克俊シニアストラテジストは10年債入札について「10月利上げが予想される中で十分な需要が集まるか不安がある」と述べた。
10年債入札は午後0時35分に結果が発表される。投資家需要を測る指標の応札倍率は前回は3.92倍で2023年10月以来の高水準だった。前回も需要は不透明だったが入札は強い結果になっており、需要は読みにくい。
東海東京証券の佐野一彦チーフ債券ストラテジストは10年債入札について「落札結果は予断を許さない」とリポートに記した。新発債で償還日が伸びて利回りアップなど絶対水準は評価される一方、イールドカーブ(利回り曲線)上や対スワップという相対価値面での妙味は薄いとしている。
不透明
最近の国債入札はより複雑な様相を見せている。週前半の2年債入札は、応札倍率が09年以来の低水準となった一方、先週の40年国入札では堅調な需要が確認された。
大和証券の小野木啓子JGBデスクストラテジストは10年債入札について「プライマリーディーラーは必要な金額をカバーするためにのみ入札するだろうが、投資家は堅実な入札を行う可能性がある」と予想した。同時に「入札後にリスクイベントが相次ぐため、入札後の流通市場で買い進む投資家はほとんどないだろう」と述べた。

債券市場の焦点の一つである自民総裁選については、結果が財政政策や日銀の政策運営に影響を与える可能性がある。
有力候補の高市早苗前経済安全保障担当相は、金融政策については日銀が決定すべきだと述べ、1年前のハト派的な発言とは距離を置いている。一方、最有力候補者の小泉進次郎農相は日銀に金融正常化を一任する一方で、財政に関してはより慎重な見方をしているとみられている。
日銀は9月30日に発表した10ー12月期の国債買い入れ予定で、残存期間10年超25年以下の買い入れを2四半期ぶりに減額した。これを受けて債券に売り圧力がかかり、今後のオペ減額方針に対する懸念も強まっている。
(第4段落に市場関係者コメントを新たに追加して更新します)
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