ホワイトハウスは政府閉鎖をめぐる攻防の顔として、バンス副大統領を前面に据える動きを強めている。トランプ大統領よりも穏当で統制のとれた情報発信役を務めさせている格好だ。

バンス氏の役割拡大は当初から明らかだった。政府閉鎖を前にした9月29日には、トランプ氏と議会指導部との交渉に同席。その後の記者への説明では、共和党のジョンソン下院議長とスーン上院院内総務に先立ち、主導的な役割を担った。

政府機関閉鎖初日には朝のテレビ番組に相次いで出演し、民主党議員がつなぎ予算に賛成すべき理由について、政権側の主張を述べた。その後、ホワイトハウスの記者会見室に突然姿を見せ、記者らの服装やトランプ氏の最近のSNS投稿を話題に軽口を交わした。こうした気さくな振る舞いは綿密に計算された演出とみられる。過激な民主党に妨げられる「穏健で責任ある政権運営者」として、共和党を印象づける狙いがありそうだ。

政敵へのネット上での挑発的発言で知られるバンス氏にとっては、新たな試みといえる。こうした姿勢は共和党にとって極めて重要だ。世論調査では、有権者は政府閉鎖の責任をトランプ氏や共和党に帰する傾向が強いことが示されている。

バンス氏は、議会と密接な関係を持ち、共和党の主張を一貫して伝えられる人物として存在感を強めている。また、政府閉鎖の開始以降、公の場への登場を控えているトランプ氏にとっても、混乱から一定の距離を置く余地を与えている。

共和党ストラテジストのアレックス・コナント氏は「トランプ氏は交渉の主導役として見られたくないのだろう」と指摘。「バンス氏はホワイトハウスの誰にも劣らず、この政治状況を理解している」と述べ、同氏の対応が「共和党にとって大きな政治的勝利につながる可能性がある」と分析した。

焦点となるのは、バンス氏の手法が世論の壁を打ち破れるかどうかだ。

10月1日に実施されたワシントン・ポスト紙の世論調査では、政府閉鎖の責任がトランプ氏と議会共和党にあると答えた人が47%に上り、議会民主党を責めた人は30%にとどまった。

左からジョンソン下院議長、バンス副大統領、スーン上院院内総務

バンス氏の役回りにはリスクも伴う。2028年の共和党大統領候補への出馬がほぼ確実視される同氏にとって、政府閉鎖への対応が不評を買えば、その責任を負わされる可能性がある。トランプ氏が気が向けばいつでも表舞台に立てるというのも、副大統領の宿命といえる。

保守系シンクタンク、コンサバティブ・パートナーシップ・インスティテュートのウェスリー・デントン氏は、上院議員の経歴を持つバンス氏はこの任務に適任だとみている。「彼には至るところに仲間がいる。上院には友人も多く、良好な関係を築いてきた。下院でも高い信頼を得ており、保守派とも良好な関係を築いている」と同氏は述べた。

原題:Vance Emerges as White House Frontman in US Shutdown Fight(抜粋)

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