自民党は4日の総裁選で高市早苗前経済安全保障担当相を第29代総裁に選出した。同党の総裁に女性が就任するのは初めて。

小泉進次郎農相との決選投票では、高市氏が議員票と都道府県票の合計で185票を獲得。小泉氏は同156票だった。午後6時ごろから記者会見を行う。

高市氏は総裁選出を受けたあいさつで、自民党の新しい時代を刻んだとし、さまざまな政策を「スピーディーに実行しなければいけない」と強調。全世代が総力を結集して政策推進と党の立て直しに取り組むよう協力を呼び掛けた。

新総裁選出時の高市氏(4日、都内)

高市氏は週明けにも党役員人事に着手。今月中旬にも行われる臨時国会での首相指名選挙に臨む。野党が候補者を一本化する見込みは立っていないため、新総裁は首相に選出される公算だ。高市氏が選出されれば初の女性首相の誕生となる。

高市氏は、大胆な金融緩和や機動的な財政政策を柱とした安倍晋三元首相の「アベノミクス」路線を継承する。防衛費など将来世代に恩恵が及ぶ投資には赤字国債の発行も選択肢とし、日本銀行は政策金利を維持すべきだとの立場だ。今回の結果は金利上昇、円安圧力となる一方、東京株式市場ではポジティブに受け止められそうだ。

みずほ証券の松尾勇佑シニアマーケットエコノミストは、高市氏の勝利は「本当に想定外」と指摘。「ドル・円は150円を目指し、日本株は最高値更新」もあり得るとみる。日銀による10月利上げは困難とみられてもおかしくない一方、過度に利上げに否定的なら円安が進み、利上げの必要性を高めるとも語った。

日銀の金融政策に関しては、0.5%の政策金利を「維持すべきだ」との立場を共同通信が行ったアンケートで示した。9月24日の討論会では、財政・金融政策の方向性を決める責任は政府にあるが、金融政策の手段は日本銀行が決めるべきだと述べていた。消費税減税についても選択肢から排除しない意向だ。

財政健全化に向けては、純債務残高の対国内総生産(GDP)比が緩やかに低下する財政運営を目指す。政府が指標の一つとしている債務残高から政府保有の金融資産を差し引いたもので、より柔軟な財政支出を可能とする。

明治安田総合研究所の小玉祐一フェローチーフエコノミストは、総裁選で消費減税の主張を封印するなど、「財政健全化が置き去りにされることはない」と指摘。金融政策に関しては、リフレ派的だが、インフレ抑制が求められる中での利上げけん制は矛盾を抱えることになり、「極端なことは言えないだろう」と語った。

連立

今回の総裁選は、衆参両院で与党が過半割れするなど、自民党にとって平時ではない状況下で行われた。政策推進には野党との調整が不可欠で、党内をまとめるだけにとどまらないリーダーシップが求められることになる。

目下、課題となるのは国会でどう多数派を形成するかだ。高市氏は選挙中、首相指名選挙までに連立拡大を模索し過半数を確保したい考えを示していた。一方で、首相指名選挙を行う臨時国会は15日に召集する方向だと報じられており、時間的制約もある。

政権運営では、野党との連立も視野に当面は政策ごとの協力が不可欠となる。まずは物価高対策に向けた経済対策の策定とその裏付けとなる年内の補正予算編成の着手が喫緊の課題となる。

外交日程も待ち受ける。10月末には東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議、アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議が予定されている上、トランプ米大統領の訪日の可能性も報じられている。

今回の総裁選には高市、小泉両氏のほか、林芳正官房長官、小林鷹之元経済安保相、茂木敏充前幹事長の計5人が立候補していた。党所属国会議員の295票と、同数に換算した党員・党友票の計590票を争った。党員投票の資格を持つ選挙人数は約91万6000人だった。

(市場関係者のコメントを追加して更新しました)

--取材協力:村上さくら、梅川崇.

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