(ブルームバーグ):人工知能(AI)ブームに乗るソフトバンクグループの存在感が東証株価指数(TOPIX)の中で急速に増し、弱気派の投資家を窮地に追い込んでいる。

生成AIビジネスへかじを切った孫正義社長率いるソフトバンクGの株価は今年度に入り2.5倍(19日時点)となり、TOPIX構成銘柄の上昇率トップ10の1社。同指数に占めるウエートも2%超と過去半年で倍増し、トヨタ自動車やソニーグループなどに次ぐ5番目に大きな銘柄となった。これほど短期間で大きくウエートが上昇したのは2000年前後のITバブル時以来だ。
エントーチ・キャピタル・パートナーズの永田芳樹最高投資責任者(CIO)は、時価総額の大きい銘柄が大幅に上昇すると、ポジション(持ち高)をアンダーウェートとしているアクティブ株式ファンドマネージャーにとっては厳しい環境になると言う。
「多くの機関投資家がソフトバンクGをどうすればいいか悩んでいるのが現状で、1銘柄を持っていないだけでその年の努力が全て吹き飛ぶ地獄のような相場だ」と永田氏は話した。

ソフトバンクG株の時価総額は今年度に15兆9000億円増え、TOPIX全体の増加分の10%弱を占める。同社株はボラティリティーが高く、ビジョンファンド事業をはじめ巨額投資を繰り返す経営体質がリスクと受け止められ、機関投資家の間ではこれまで必ずしも人気がある銘柄ではなかった。
しかし、三菱UFJアセットマネジメントの友利啓明エグゼクティブファンドマネジャーは「マインドを変える必要がある」とみている。「ChatGPT」を開発するOpenAIの成長力がすさまじく、「生成AIの使用が日常化しそうな中で投資を続けている自信をくみ取ったほうがいい」と指摘。ソフトバンクG株にとって今後はOpenAIのフェアバリュー(公正価値)をどう織り込むかが主眼になると言う。
ソフトバンクGとOpenAI、オラクルの3社は今年に入り米国でのAIインフラ投資計画をスタートさせ、ソフトバンクGはOpenAIに対し12月までに単独で300億ドル(約4兆4400億円)の出資を完了する予定。直近では、OpenAIから大型受注を受けたブロードコムやオラクルの株価が急上昇した。

ソフトバンクG株の日本株市場全体の動きに対する感応度を示すベータ値は1.515と、TOPIX100銘柄の中で最も高い。これは市場よりも1.5倍以上変動するボラティリティーの大きさを表している。また、ブルームバーグのデータによれば、同社が重視する時価純資産(NAV)に対する株価のディスカウント率が2割程度と最近では最も小さく、ピークに近いとみる市場関係者も少なくない。
もっとも、先高観は依然として根強く、アナリストの間でも実勢に合わせ目標株価の引き上げが相次いでいる。過去1カ月余りの間に目標株価を2度上方修正した野村証券の増野大作アナリストは、ビジョンファンドの損益改善でリスク要因が減少したほか、インテルへの出資でAIチップ構想が進展する可能性が高まった点などを理由にNAVディスカウントがなくなると予想した。
エントーチ・キャピタルの永田氏も、ソフトバンクG株をアンダーウエートしている投資家からの買いが今後も続く可能性があると分析。指数構成ウエートが大きい銘柄が急騰した場合、ファンドマネジャーにとってアンダーウエート幅を縮めるのは大変で、「ベンチマーク運用の弊害だが、買いが買いを呼ぶ展開もあり得る」との見方を示した。

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