(ブルームバーグ):専門技術者が米国で就労するための「H-1Bビザ」。この申請に極めて高額の手数料が課されることは、インドのハイテク企業による米国プロジェクトを脅かすリスクがある。モディ首相は「米国第1」政策の新たな弊害に対処せざるを得なくなった。
トランプ米大統領が19日に署名した布告は、同ビザの申請に10万ドル(約1480万円)の手数料を課すもの。顧客企業にエンジニアを派遣してきたインドのアウトソーシング企業は、利益率の圧迫が避けられなくなる。すでに地政学的な緊張とトランプ政権の関税政策でハイテク支出が切り詰められ、2800億ドル規模のインドITサービスセクターは成長ペースが落ちている。ここにさらなる打撃が加わった。
インドと米国の関係はビザ制度の変更前からすでに緊張していた。折しも貿易協議の突破口を探ろうとしていたインド政府交渉団には、ワシントン訪問直前の衝撃となった。世界中で広がる反移民運動に弾みがつくことも予想される。世界最大の人口を抱えるインドへの影響は必至だ。
テック・マヒンドラの元最高経営責任者(CEO)で、現在は人工知能(AI)企業を経営するチャンダー・プラカシュ・グルナーニ氏は「地政学的な縄張り争いだ」と話す。「メッセージは明白だ。外国人学生は歓迎されない、外国人労働者は歓迎されない」ということだと述べた。
H-1Bビザ制度は、インドのアウトソーシング企業や米国のハイテク企業が国外から高スキルの労働者を呼び込むために広く利用している。金融企業やコンサルティング会社もこの制度を利用しており、数万件ものビザが抽選で提供されている。トランプ政権はこの変更を、悪用を排除して正当な申請を強化するための広範な計画の一部と位置付けている。
H-1Bビザは雇用主が3月までに申請し、4月に抽選が実施される制度で、この6万5000件に加えて、米大学の修士号取得者向けに2万件が用意される。2025年には47万件以上の申請が提出された。ブルームバーグ・ニュースの調査によれば、同じ労働者の当選確率を高めるために複数の登録を行う企業は少なくない。
原題:Trump’s $100,000 Visa Threatens Business Model of India IT Firms(抜粋)
--取材協力:Shruti Srivastava、Newley Purnell.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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