(ブルームバーグ):アップルのワイヤレスイヤホン「AirPods Pro」は非常に人気が高いため、設計や音質を大きく変えるのはアップルにとってリスクだ。しかしスマートフォンiPhoneの大幅刷新に合わせ、AirPods Pro 3も野心的な進化を遂げた。外見は従来どおり白一色のデザインを維持しているが、快適性、ノイズキャンセリング、音質、耐久性、マイク性能などで大幅な改善が加えられている。価格はAirPods Pro 2と同じ249ドルで19日発売された。日本での公式価格は税込み3万9800円。
新モデルには心拍数センサーが搭載されており、エクササイズにより適した仕様となった。見た目に大きな違いはないが、イヤホンの角度が調整され、耳によりフィットするように設計されている。重量もわずかに増えたが、装着時には感じない程度の差だ。最も大きな変化は新しいイヤーチップで、シリコンとフォーム材を組み合わせた設計により、より安定して密着するようになった。

イヤーチップは5サイズで展開され、新たにXXSサイズも追加された。これにより食事やハードな運動、会話の最中でも外れにくくなっている。IP57の防じん・防水性能を備え、雨や汗への耐性も向上。フィットネス用途を意識した心拍数センサーは、アップルのフィットネスアプリで50種類のワークアウトと連携し、iPhoneのロック画面にも心拍が表示される。スマートウオッチ「Apple Watch」との併用時は、より正確なデータが自動的に選択されるが、その判断基準は公開されていない。

アクティブノイズキャンセリング(ANC)は大幅に向上し、アップルはAirPods Pro 2の2倍の効果があると主張している。実際、地下鉄通勤中の使用でも違いは顕著に感じられ、30-40%の音量にしても周囲の雑音に妨げられずに音楽を聴ける。外部音取り込みモードも自然な音質となり、補聴器のような使い方にも向く。外部音取り込みモードでは最長10時間、通常のANC使用時は最長8時間の再生が可能。充電ケースの容量はやや減ったが、連続使用時間が伸びたことで実用性は向上した。
音質面では音の広がりが増し、低音の深みが増し、ボーカルもクリアに聞こえるようになった。マイクの性能も向上し、録音や通話での音声を拾いやすくなった。DJIのようなワイヤレスマイクよりもAirPods Pro 3を好むコンテンツ制作者がいるかもしれない。
従来モデル同様、iPhoneとの連携機能も継続されており、デバイス間の自動切り替えやオーディオ共有、セットトップボックス「Apple TV」でのプライベート視聴などが可能。充電ケースの位置特定機能も精度が上がっている。また、大音量環境での耳の保護や、補聴モードの適性テスト機能も健在だ。

年内に日本語追加
新たに加わったライブ翻訳機能は、AirPods Pro 3と2の両方で利用可能。スペイン語などで当初はスタート。アップルのウェブサイトによれば、年内に日本語や中国語、韓国語、イタリア語も追加を予定している。両耳のステムを長押しすると話者の声が静かになり、翻訳音声に集中できる。相手もAirPodsを装着していれば同様の体験が可能だ。またiPhoneの翻訳アプリを使って、自分の話を文字で表示することもできる。
この機能にはiPhoneが必要で、言語パックを事前にダウンロードすればおおむね広告通りスムーズに動作する。反応の遅さや、音声アシスタント「Siri」による誤訳はあるが、内容を把握するには十分。アルファベットのスマートフォン「Google Pixel」のように話者の声を再現することはせず、AirPodsはロボット的なSiriの声で翻訳する。とはいえ、この機能はアップルにとっては数少ない人工知能(AI)分野で成功例といえる。
総括
外観に新味はないが、AirPods Pro 3は装着感やノイズキャンセリング、音質などで着実に進化している。さらに心拍センサーや翻訳といった新機能も加わり、古いAirPodsからの買い替えを促すには十分な内容となっている。アップル製品のユーザーでなくても、思わずうらやましくなるほど魅力的だ。
原題:Apple’s AirPods Pro 3 Offer Compelling Set of Upgrades: Review(抜粋)
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