米政府は、鉄鋼大手USスチールによるイリノイ州工場の操業停止計画を阻止した。トランプ政権の当局者が明らかにした。連邦政府が日本製鉄による買収を承認した後も、米国を象徴する企業であるUSスチールに対し影響力を維持していることを示す動きだ。

今回の動きについては米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が先に報じ、政権当局者が匿名を条件に確認した。

USスチールは19日の発表資料で「グラニットシティーへのスラブ供給を継続する」とコメント。「当社の目標は柔軟性の維持にあり、グラニットシティーでのスラブ消費を継続する解決策を見いだせたことに満足している」と説明した。

日本製鉄は1年半にも及ぶ厳しい交渉の末、今年6月に141億ドルでのUSスチール買収を実現させた。2024年米大統領選で争点にもなったこの買収により、世界第2位の製鉄会社が誕生した。

トランプ大統領は、米政府がUSスチールの「黄金株」を保持することに日鉄が同意したことを受け、買収を承認した。これにより、政権は特定の経営判断に関与できるようになった。

WSJの19日の報道によれば、ラトニック商務長官がUSスチールのデーブ・ブリット最高経営責任者(CEO)に対し、イリノイ州グラニットシティー工場の操業を継続させるため、トランプ大統領が黄金株を行使すると伝えたという。事情に詳しい複数の関係者を引用している。

24年の選挙キャンペーンでは、トランプ氏も民主党の対立候補も、日鉄によるUSスチール買収計画に反対を表明していた。しかしトランプ氏は2期目スタート後、この合意が米鉄鋼業界の雇用を守ることに寄与するとして立場を翻した。承認を確保するため、日鉄は28年までに110億ドルを追加投資することにも同意した。

USスチールは先週、同工場でのスラブ消費を減らしつつ、他の2施設でスラブの生産・加工に注力すると発表していた。同工場を稼働可能な状態に維持し、従業員のレイオフや賃金調整は行わないと説明。「将来の柔軟性を維持しつつ、国内生産基盤を最大化する」ためのものだとしていた。

全米鉄鋼労働組合(USW)は19日の声明で、USスチールが「約束から逃れ、われわれが警告してきたような変更を進めようとした」と批判。「われわれの製鉄所に加え、グラニットシティーには休止中の高炉が2基あり、これを活用すればわが国の鉄鋼需要を容易に満たすことができる」と主張した。

原題:Trump Officials Blocked US Steel From Stopping Work at Plant(抜粋)

--取材協力:Brian Eckhouse、Jennifer A Dlouhy.

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