(ブルームバーグ):19日の米国株相場は続伸し、最高値を更新。ウォール街では米連邦公開市場委員会(FOMC)の利下げ期待を背景に、企業の収益見通しが明るさを増している。
S&P500種株価指数は4月の安値からの上昇で時価総額が15兆ドル近く膨らんでおり、一時的な調整に向かうとの声も出ているが、市場では強気のセンチメントが優勢だ。経済が成長を続ける中でFOMCは金融緩和を再開し、リスクテークに前向きなシグナルを送った。

UBSグローバル・ウェルス・マネジメントのウルリケ・ホフマン・ブチャディ氏は「景気後退ではない環境での米緩和サイクルは、これまで株価を支える効果を発揮してきた。人工知能(AI)、企業収益、消費に支えられ、さらなる上昇が見込まれる」と述べた。
ただ最近の強い上昇を踏まえれば「調整局面」が訪れても意外ではないと、同氏は指摘。基本シナリオとして、S&P500種は2026年6月までに6800に達すると予想。強気シナリオでは7500到達もあり得るとした。
S&P500種は大型テクノロジー銘柄がけん引する形で上昇し、終値で6660を上回った。 オラクルは約200億ドル(約2兆9600億円)規模のクラウド契約をめぐり、メタ・プラットフォームズと協議を進めている。事情に詳しい関係者が明らかにした。小型株のラッセル2000指数は下落。前日は2021年以来となる最高値で終了していた。
またこの日は5兆ドル規模のトリプルウィッチングを背景に、引けにかけて売買高が急増したものの、一部のアナリストによれば、低ボラティリティー環境の中、必ずしも大きな値動きをもたらす要因にはならなかった。米国株関連デリバティブ(金融派生商品)の満期日が集中する日をトリプルウィッチングと呼ぶ。

米連邦準備制度理事会(FRB)のマイラン理事は経済専門局CNBCで、今回のFOMC会合で金利に関して特定の方向に投票することをトランプ大統領に約束しなかったと強調。「私はデータや経済に関する自分の解釈に基づいて、独立した分析を行うつもりだ。それが私のすること全てだ」と述べた。またミネアポリス連銀のカシュカリ総裁は今回の決定を支持し、年内2回の追加利下げを想定していると述べた。
パイパー・サンドラーのクレイグ・ジョンソン氏は「FOMCの利下げは株式市場に強気のリズムを与えた」と指摘。「この強気相場で上値を追うレースは、このところの最高値更新という『ピットストップ』で状態を整えてから、再びスピードを上げて走り出すだろう」と語った。
ネーションワイドのマーク・ハケット氏は、例年9月は株価が下落しやすい時期だが、今年の市場はそのパターンに逆らっていると指摘。
「それでもS&P500種が予想利益の22倍で推移し、ボラティリティーが抑制されている状況では、調整や不安定な値動きがあってもそれは正常で健全な展開だ」と述べた。
国債
米国債は下落(利回りは上昇)。週間ベースでも値下がりした。パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の発言を受け、より積極的な利下げに対する期待が後退した。
19日の取引では全年限で利回りが1-4ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇。FOMCが0.25ポイントの利下げを決定した17日から、利回り上昇が続いている。
パウエル議長は会合後の記者会見で、今後の追加利下げ見通しについては「会合ごとに判断する状況にある」とし、慎重な姿勢を示した。この発言を受け、速いペースでの利下げへの期待は抑制されたが、金利スワップ市場はなお年内2回の追加利下げを織り込んでいる。
ハートフォード・ファンズの債券ストラテジスト、アマー・レガンティ氏は「FOMC会合の前は、債券市場はトーンもポジショニングも極めて楽観的だった」と指摘。「FOMCは今回利下げし、さらに複数回の追加利下げが行われる可能性が高いものの、市場が期待しているような展開をFOMCが追認したわけでは決してない」と分析した。

為替
外国為替市場では円が対ドルでほぼ変わらず。東京時間に日本銀行の政策決定を受けて一時0.5%上げた後、伸び悩み始め、ニューヨーク時間にはマイナスに転じる場面も見られた。ブルームバーグのドル指数は上昇。市場ではFOMCの政策決定を受けたポジション調整が続いている。
TSロンバードのローリー・グリーン氏はリポートで日銀の政策決定について、「審議委員2人の反対のほか、保有する上場投資信託(ETF)などの市場への売却はタカ派的に見える」と指摘。「ただ植田総裁の記者会見は明確な方向性を欠いていた。まずまずのインフレデータと政治面での不確実性から、植田総裁は1月とまではいかなくとも、少なくとも12月(薄商いのため金利を調整する時期としては異例)に先送りすると考えられる」と記した。

ブルームバーグ・ドル・スポット指数は0.2%上昇。3日続伸となった。週間ではほぼ変わらず。ただオプション市場の動向からは、トレーダーらが長期的な弱さを警戒していることがうかがえる。
原油
ニューヨーク原油先物相場は3営業日続落。トランプ米大統領と中国の習近平国家主席との電話会談を受けて、米国がロシア産原油に間接的な課税を発動するとの観測は後退した。
10月限の最終取引を来週に控え、ポジションのロールオーバー(乗り換え)が進んだことで荒い値動きとなった。トランプ氏は来月末に韓国で開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に合わせ、習氏と対面で会談することに合意したと明らかにした。ただ、中国によるロシア産原油の継続的な購入について、公な言及はなかった。
つい1週間前、ロシア産原油を購入する中国とインドに最大100%の関税を課すよう、米国は主要7カ国(G7)諸国に求める方針だとされていた。今回の電話会談を受けて、中国に対する米国の二次的な関税への警戒感は和らいだ。こうした措置が発動されれば、貿易摩擦の激化と世界の需給バランス逼迫(ひっぱく)につながる可能性がある。
CIBCプライベート・ウェルス・グループのシニア・エネルギー・トレーダー、レベッカ・バビン氏は「トランプ氏が習氏との会談後、中国のロシア産原油購入に特に言及しなかったことで、米国が二次制裁を発動するとの見方は後退した」と指摘。「同時に、インドは引き続きロシア産原油を購入しており、欧州連合(EU)による制裁の文言も米国の追加措置を誘発するほど強いものには見えない」と述べた。

供給に関し矛盾するシグナルや米景気見通しが意識される中、原油価格は1カ月半前から5ドルのレンジ内で推移している。ロシアのエネルギー関連施設に対しウクライナが繰り返す攻撃や、ロシア産原油への制裁を求める国際的な動きが支援材料になっている。一方で、需給バランスは供給過剰に向かうとの見方が依然として大勢で、その懸念でここ数週間、上値が抑えられている。
エミレーツNBDの調査責任者、エド・ベル氏は「ロシアの石油インフラへの攻撃が価格を押し上げる材料になっている一方で、今後数カ月に供給過剰に傾くとの見通しが上値を抑えている」と述べた。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェストテキサス・インターミディエート(WTI)先物10月限は、前日比89セント(1.4%)安の1バレル=62.68ドルで終了。11月限は1.4%安の62.40ドル。ロンドンICEの北海ブレント11月限は1.1%下落の66.68ドル。
金
金スポット相場は反発。市場はFRBの利下げ路線に関し、次の手掛かりを待っている。
金は17日に史上最高値を記録した。FRBの利下げが背景にある。ただ、その後は下落。パウエルFRB議長が今後の緩和については「会合ごとに判断する」と述べ、金融政策の道筋が想定ほどハト派的ではないとの見方が広がった。
ペッパーストーン・グループのストラテジスト、アフマド・アシリ氏は金相場について、今月初めに上昇して以降、「値固めのレンジに落ち着きつつある」と指摘。価格は1週間前とほぼ同水準にあり、「上昇を経て市場が新たな足場を固めつつある」ことが示唆されるとし、「資金フローは依然として買いに傾いているが、直近高値の1オンス=3700ドル近辺を今にも突破しそうな勢いは後退した」と続けた。

短期金融市場は年内あと約2回の利下げをなお織り込んでいる。米金融緩和への期待を主因に、金相場は今年に入って39%急騰した。
金スポット価格はニューヨーク時間午後2時56分現在、39.12ドル(1.1%)高の1オンス=3683.40ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物12月限は27.50ドル(0.75%)上昇の3705.80ドルで引けた。
原題:S&P 500 Trading Volume Spikes at Wall Street Close: Markets Wrap(抜粋)
Treasuries Slip for Week as Powell Weighs on Outlook for Rates
Dollar Edges Higher, Yen Pares Gains After BOJ: Inside G-10
Oil Falls as Trump, Xi Jinping Meeting Curbs Tariff Expectations
Gold Nudges Higher as Traders Look for Clues on Rates and Dollar
--取材協力:Isabelle Lee.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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