人工知能(AI)データセンター向けの銅箔や高性能配線材の需要が旺盛で、日本の非鉄金属メーカーの株価に先高観が強まっている。

三井金属やJX金属の株価は今年の上昇率が2倍を超えており、東京証券取引所33業種の7-9月期(17日時点)の騰落率で非鉄はプラス44%と圧倒的なトップパフォーマー。同四半期の上昇率としては過去最大で、東証株価指数(TOPIX)や日経平均株価のおよそ4倍だ。両社はデータセンター向け高性能銅箔の製造を手がけ、需要が加速している。

非鉄セクターを含む足元のAI・データセンター関連銘柄にとって、対話型AI「chatGPT」を開発するオープンAIや日本のソフトバンクグループと巨額のAIインフラ投資プロジェクト「スターゲート」を進める米オラクルの動きが株価上昇に勢いをもたらしている。

オラクルは先週、クラウド事業について強気な見通しを示し、株価は約33年ぶりの上昇率を記録。AIに対する需要の強さと投資人気の高さを改めて浮き彫りにした。MSCIアジア太平洋指数も直近で最高値を更新し、年初来の上昇を主導しているのは情報技術セクターだ。

英ペラム・スミザーズのアナリスト、ウィリアム・ネストゥク氏は「オラクルの最新ガイダンスは、AIデータセンター関連の設備投資が当面拡大し続けることを示している」と指摘。こうした状況は、非鉄セクターに属するフジクラや住友電気工業など日本のケーブルメーカーに追い風になるとの見方を示した。

年平均成長率12%

ブルームバーグ・インテリジェンスはデータセンターインフラ機器の売上高が2028年までに60%増の730億ドル(約10兆7000億円)に達し、年平均成長率(CAGR)は12%になるとの予測を示している。

また、SBI証券の鈴木英之投資情報部長は、貴金属市況とも密接に関係する非鉄セクターはインフレヘッジとしても機能する可能性があると言う。「株価純資産倍率(PBR)1倍割れなど市況産業として出遅れ感が強いセクターであり、銘柄によっては十分買い直される可能性はある」とみている。

日本の基調的な物価指標は、日本銀行の目標である2%を3年以上にわたり上回って推移している。

もっとも、テクニカル指標から見た過熱感や投資指標面からの割高感は短期的に株価の上値を抑制する可能性はある。非鉄金属指数の相対力指数(RSI)は目先の買われ過ぎを示唆する70を超え、予想株価収益率(PER)は24倍とTOPIXの18倍を上回っている。

岩井コスモ証券の林卓郎投資情報センター長は、足元の株価上昇の勢いが強く、「行き過ぎの調整はある」としながらも、「AIの成長期待は変わらない」とし、緩やかな上昇基調に早晩戻るとの見方を示している。

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