(ブルームバーグ):米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は、米経済の減速を防ぐために連邦準備制度が一連の大幅利下げに踏み切るとの債券市場の見方をけん制した。
米連邦公開市場委員会(FOMC)は16、17両日に開いた定例会合で、市場予想通り主要政策金利を0.25ポイント引き下げることを決定した。また年内さらに2回の利下げを予想した。
ただパウエル議長は依然としてインフレリスクを注視し、慎重姿勢を崩さない意向を表明。より大幅な利下げを求めるトランプ大統領の圧力に金融政策当局者が屈した兆しは見られず、反対票はトランプ氏が新たに理事に指名したスティーブン・マイラン氏1人にとどまった。
この姿勢を受け、債券市場では労働市場が失速の兆候を示しているにもかかわらず、金融政策の方向性が依然として不透明との受け止めが広がった。その結果、決定直後に一時的に低下した米国債利回りはその後切り返し、最終的に米10年債利回りは6ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇し4.09%で取引を終えた。
ブランディワイン・グローバル・インベストメント・マネジメントのポートフォリオマネジャー、トレーシー・チェン氏は「市場が織り込むような大幅利下げは既定路線ではない。今回の0.25ポイント利下げは保険的な意味合いが強く、リスク管理の一環だ」と述べた。

パウエル議長が先月、据え置きを維持していた政策金利を再び引き下げる用意があると示唆して以降、債券相場は大きく上昇していた。一部の投資家は年末までに0.5ポイントの利下げに踏み切るとの見方を強めていた。
これにより今回の定例会合前から市場の期待は高まっていたが、新型コロナウイルス禍後の米金融当局の動向に振り回されてきた債券市場には逆行リスクもくすぶっていた。また、トランプ氏の圧力によって金融当局内に分裂が生じ、一部が大幅利下げを求めるとの観測も出ていた。
パウエル氏は、労働市場の悪化を防ぐためには追加緩和に動く用意があるとし、労働市場はもはや「非常に堅調」とは言えないとの認識を示した。ただし、トランプ氏による関税措置がインフレ再燃につながらないようにする必要があるとし、「会合ごとに判断する状況にある」と強調。積極的な景気下支え策に一気に転じる考えは否定した。
パウエル氏の発言を受け、米金融当局の政策見通しに敏感な2年債利回りは5bp上昇して3.55%となった。イールドカーブ(利回り曲線)全体も上昇し、連動してドルも買われた。
注目された最新の四半期経済予測では、年内に0.25ポイントの利下げをさらに2回行うと見込んでいることが示された。また2026年と27年に1回ずつ、0.25ポイントの利下げを予想した。
6月時点では、年内に計2回、26年と27年にそれぞれ1回の利下げが見込まれていた。
TCWグループのグローバル金利共同責任者、ブレット・バーカー氏は「タカ派ではないが、市場の予想よりはタカ派的だ。米金融当局は市場が織り込む利下げ観測を追認していない。重要なのは、今回の利下げをあくまでリスク管理の一環だとパウエル氏が説明した点だ。連続利下げの可能性を示唆したわけではない」と語った。
原題:Powell’s Caution Dashes Bond-Market Bets on Aggressive Rate Cuts(抜粋)
(米国10年債利回りの水準を追加して更新します)
--取材協力:Michael MacKenzie、Elizabeth Stanton.
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