米連邦公開市場委員会(FOMC)は16、17両日に開いた定例会合で、主要政策金利を0.25ポイント引き下げることを決定した。また年内さらに2回の利下げを予想した。ホワイトハウスは数カ月にわたり、金融当局に利下げを強く要求してきた。

米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は関税によるインフレ懸念から今年据え置いてきた政策金利を巡り、今回引き下げに踏み切る時期だと当局者ら判断した理由として、労働市場に軟化の兆しが強まっていることを挙げた。

会合後の記者会見でパウエル氏は、「労働需要は軟化し、最近の雇用創出ペースは失業率の安定維持に必要な水準を下回っているようだ」とし、労働市場が「非常に堅調」だとは「もはや言えなくなった」と議長は述べた。

パウエル議長の記者会見(抜粋)

今回の決定はFRBにとって異例の局面で下された。トランプ大統領は今週、注目されていた今回のFOMC会合を前に、理事1人の解任に向けた法廷闘争を続けたほか、自身の経済顧問トップをFRBに送り込んだ。トランプ氏は大幅な利下げを要求し、FRBへの影響力拡大を狙っている。

FRBのクック理事と、新たに理事に就任したマイラン大統領経済諮問委員会(CEA)委員長はいずれも今回の会合に出席した。マイラン氏は理事の任期中、CEAの職務を無給休職とする。

フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標は4-4.25%となった。今回の利下げは賛成11、反対1で決定。FOMCは今年に入り5会合連続で政策金利を据え置いてきた。

反対票を投じたのは新しく就任したマイラン理事のみで、より大幅な0.5ポイントの利下げを主張した。

パウエル議長は会見で、関税に伴うインフレ圧力への懸念が続いていることも示唆。「われわれの責務は、物価水準の一時的な上昇が持続的なインフレの問題にならないようにすることだ」と語った。

今後の追加利下げ見通しについては、FOMCは現在のところ「会合ごとに判断する状況にある」とし、慎重な姿勢を示した。

会合後の声明では「インフレは上昇し、幾分高止まりしている」としつつ、雇用についても懸念を示した。失業率について「やや上昇した」としたほか、「雇用の下振れリスクは高まった」と付け加えた。

パウエル議長の発言が始まり、今回の決定について「リスク管理の利下げ」と表現すると、一時下げていたドルは上昇に転じた。米国債利回りも上昇した。円は対ドルで下落に転じた。株式市場ではS&P500種株価指数が一時上昇した後に、0.1%安で引けた。

今回の利下げは広く予想されていた。ここ数カ月における雇用ペース急減速を受け、FOMCの懸念がインフレから雇用へと移る兆しが見られていた。

FOMCは今回、最新の四半期経済予測も公表。年内に0.25ポイントの利下げをさらに2回行うと見込んでいることが示された。これは6月時点での予想より1回多い利下げを予想していることを意味する。また2026年と27年に1回ずつ、0.25ポイントの利下げを予想した。

当局者1人は、政策金利が今年さらに1.25ポイント低下すると予想した。

最新の金利予測分布図(ドットプロット)

経済予測では、26年の成長率予測の中央値が若干引き上げられた。また来年のインフレ率も小幅に上方修正された。

原題:After Rate Cut Powell Says Jobs Market No Longer Very Solid(抜粋)

(議長の発言や背景、相場の動きを追加し、更新します)

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