民間企業の2025年冬のボーナス一人当たり支給額を前年比+2.6%と予想する(毎月勤労統計ベース)。冬のボーナスとしては5年連続の増加となるだろう。
11月6日に厚生労働省から公表された25年夏のボーナス(賞与支給事業所における労働者一人平均賞与額)は、前年比+2.9%と4年連続で増加した。
ボーナスの交渉は、春闘時にその年の年間賞与を決定する夏冬型、秋にその年の冬と翌年の夏の賞与を決定する冬夏型、賞与の度に交渉を行う毎期型などがあるが、夏冬型を採用する企業が最も多い。
そして夏冬型においては、前年の企業業績が交渉のベースとなる。価格転嫁を積極的に進めたこともあって好調だった24年度の企業業績を反映して、ボーナスについても増額で妥結する企業が多かった。
物価高により、家計に賃上げの恩恵が感じられないことへの問題意識は高まっており、企業も物価高への配慮を行わざるを得ないことに加え、人手不足感が強まっていることも人材確保の面から賃上げに繋がったとみられる。
夏のボーナス増に続き、冬についてもこの交渉結果が反映される形で増加が予想される。
毎期型の企業、あるいは組合が存在しない中小・零細企業においては、より直近の収益状況・業況がボーナスに反映されやすい。
もっとも、足元の企業業績は製造業を中心に鈍化はしているものの、非製造業の下支えもあって全体としては落ち込みは回避されており、現時点ではトランプ関税による下押しは懸念されていたほどにはなっていない。
利益の水準も高く、従業員への還元余力は存在すると見て良いだろう。また、人手不足感も強いままであることに加え、物価高への配慮も引き続き必要であることを踏まえると、中小・零細企業においてもボーナス減額のハードルは高いと思われる。
夏対比では伸びの鈍化が見込まれるが、全体としてみれば冬のボーナスも増加する可能性が高いだろう。
実質賃金は足元まで9か月連続で減少となっているが、冬のボーナス増や物価の鈍化を背景として、25年12月以降はゼロ近傍まで持ち直す可能性があるだろう。
これまで実質賃金の減少が続いていたことを考えると家計にとっては朗報だが、それでもようやく下げ止まる程度に過ぎない。個人消費の押し上げについて過度な期待は禁物と考える。
※情報提供、記事執筆:第一生命経済研究所 経済調査部・シニアエグゼクティブエコノミスト 新家 義貴
