人工知能(AI)がテクノロジー株のバブルを助長しているとの懸念がある中、ソフトウエアメーカー、米オラクルもその話題の中心に加わっている。

AIコンピューティング需要の急拡大がオラクルの売上高を押し上げており、株価は年初来で80%余り上昇し、S&P500種株価指数の構成銘柄で7番目に高いパフォーマンスを示している。直近の株価急騰は、クラウド事業の売上高が今後3会計年度で700%増加するとの見通しを同社が示したことを受けたもので、9月10日には株価が36%上昇した。

オラクルはTikTokの米国事業を巡る交渉とも関連がある。同社は長年にわたり、TikTokの主要なクラウドインフラ提供企業だ。ホワイトハウスは17日、米国内でのTikTok使用を禁止する期限を12月16日まで延長し、協議が継続されることになった。オラクル株はここ2日間で続伸していたが、17日は反落している。

オラクルの予想株価収益率(PER)は43倍と、ドットコム・バブル期以来の高水準となっており、S&P500種採用企業の時価総額上位9社のうち8社を上回る割高な水準にある。例えばエヌビディアは、今後12カ月間の予想に基づくPERが31倍となっており、この期間の売上高成長率はオラクルよりはるかに高いと見込まれている。

フルトン・ブレークフィールド・ブロエンニマンのリサーチディレクター、マイケル・ベイリー氏は「投資家はこれまでオラクルを退屈で成長の乏しい企業と見ていたが、突如としてAIの勝ち組と認識し始めた」と指摘。その上で、「だがリスクも大きい。いまこの株を買うというのは、4年目、5年目、6年目に爆発的な成長が実現するとの『希望』に賭けているようなものだ」と述べた。

 

オラクル株が割高に見えるのは、本格的な成長の実現が数年先になるとみられているためだ。アナリストは現会計年度および来年度の利益予想をまだ引き上げていない。しかし、今後3年間の利益予想を基にすれば、PERは25倍とやや落ち着く水準になる。それでも過去10年の平均のほぼ2倍に相当する。

ベイリー氏は「今年の業績は関係ない、来年も関係ない、重要なのはその翌年だ」と指摘。「数年後に爆発的な成長が訪れるという見立てで、今それを織り込む必要がある」と述べた。

もっとも、グロース株に長期的な視点で投資することに抵抗のない投資家も多い。例えば人気の高いテスラやソフトウエア開発の米パランティア・テクノロジーズは、今後12カ月の予想利益ベースでPERが180倍超と、ナスダック100種指数の平均である27倍を大きく上回っている。3年先の利益を基にしても、それぞれ約100倍と依然として高水準だ。

ただ、これらの企業は例外的な存在だ。AI関連株の中でも特に注目されているエヌビディアでさえ、3年先の予想利益に基づくPERは24倍。現在の業績が絶好調にもかかわらず、オラクルより低い。

 

ブルームバーグがまとめたアナリスト予想平均によると、オラクルの売上高は現会計年度に17%増加し、2027年度に22%、28年度には42%の伸びが見込まれている。一方、エヌビディアの売上高は今年が58%の増加が予想されており、翌2年間はそれぞれ33%、17%の成長が見込まれている。

フォート・ピット・キャピタル・グループのダン・アイ最高投資責任者(CIO)は「現在のPERには、オラクルが発表した計画がすべて非常に高い確率で実現することが織り込まれている」とし、「われわれはやや懐疑的な立場だ」と語った。

もちろん、今後12カ月の見通しに依存すること自体に本質的なリスクがあるが、それが3年先ともなればなおさらだ。特にAI分野では、クラウドコンピューティングのサービスやインフラを提供する企業を除けば、大半の企業にとって確実な収益源とはまだ言えないのが実情だ。

バリュー・ポイント・キャピタルのプリンシパル、サミール・バシン氏は「オラクルが案件を獲得できないことが問題なのではなく、エンドユーザーが市場の想定通りに迅速にその恩恵を受けられるかどうかが課題だ」と指摘。「ドットコム時代には、光ファイバーを敷設すれば株価は上がったが、結局のところエンドユーザーの内部収益率(IRR)はマイナスだった」と述べた。

それでも現時点では、オラクルの高いバリュエーションがウォール街を警戒させるには至っていない。ブルームバーグが調査対象とするアナリスト47人のうち、70%超が同社株の投資判断を「買い」に設定しており、「ホールド」は13人、「売り」はゼロとなっている。

シティグループのアナリスト、タイラー・ラドキー氏は、今月の決算発表を受けてオラクルの投資判断を「買い」に引き上げた。成長見通しの改善を理由に、より高いPERを正当化できると評価した。

ラドキー氏は10日付のリポートで、「今後、売上高と利益の両面で成長が大きく加速する見通しに照らせば、オラクル株にはなお上昇余地がある」と記している。

原題:Oracle Sparks Bubble Talk With Stock Price in Dot-Com Territory(抜粋)

--取材協力:Ryan Vlastelica、Matt Turner、Subrat Patnaik.

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