(ブルームバーグ):米ペンシルベニア大学ウォートン・スクールが、単独寄付として同校史上最大となる6000万ドル(約88億円)を受け、新たに定量(クオンツ)ファイナンスの修士課程を創設する。寄贈するのは米投資運用会社ジェイコブス・レビー・エクイティー・マネジメントの共同創業者、ブルース・ジェイコブス氏だ。
経営学修士(MBA)人材の輩出で名高いウォートンで、新たな学位が設けられるのは50年ぶり。新プログラムの諮問委員会には、シタデルやミレニアム、サスケハナといった大手トレーディング企業が名を連ねる。履修は1年間で、最終学期には同業界と連携した研究プロジェクトが組み込まれる。
「大学で学べる理論と実務のギャップを埋める取り組みだ」とウォートンで1986年に金融学の博士号を取得したジェイコブス氏(74)は語る。学生にとっては、MBA取得前にリーダーシップや経営スキルを養う第一歩となり得ると付け加えた。同氏は金融学術誌に論文を発表してきた経歴も持つ。
このプログラムは、人工知能(AI)やアルゴリズム取引、データの複雑性といった業界を形成するテーマに対応することを目指し、数学での高度な履修要件が課される。
ウォートンのエリカ・ジェームズ学部長は、実際の市場環境に同校がどう応じているかを示す取り組みだと指摘。「まさに高等教育がなぜ機会を生み続けるのかを体現する学位だ。実用的であり、時代に即し、経済環境を規定する中核分野に不可欠だ」と語った。
ペンシルベニア大学は、2023年10月7日のイスラム組織ハマスによるイスラエル攻撃後に起きた反ユダヤ抗議活動への対応を巡り、米議会から厳しい追及を受けてきた。最近では、トランスジェンダー女性の女子競技出場を容認した件で、トランプ政権に謝罪することでも合意した。
ジェイコブス氏は、こうした大学をめぐる論争で高等教育への寄付が減少していることを認めつつも、自分の関心は未来にあると強調した。
新プログラムは2026年秋に開講予定で、当初はペンシルベニア大学の学部生のみが応募できる。初年度の定員は40人を見込み、最終的には60人規模に拡大する方針だ。
原題:Wharton Gets Record $60 Million Gift to Launch Quant Degree(抜粋)
もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
©2025 Bloomberg L.P.