(ブルームバーグ):タイ下院総選挙が8日投開票され、少数与党の保守政党「タイの誇り党」が予想外の勝利を収めた。王党派エスタブリッシュメント寄りの政党としては今世紀初の勝利となった一方、革新派勢力は敗北を喫することとなった。タイには一定の安定がもたらされる可能性がある。
開票率約93%の段階で、アヌティン首相率いるタイの誇り党は、全500議席のうち191議席を獲得する勢いだ。これは2023年の前回選挙での獲得議席数の約3倍に達する。事前の世論調査でリードしていた革新系の「国民党」は114議席にとどまる見込みだ。
タイの誇り党は与党という優位性に加え、隣国カンボジアとの緊迫した国境紛争によるナショナリズムの高まりを強調した選挙戦展開で、専門家の予想を覆した。
アヌティン氏はバンコクの党本部で記者団に対し、タイの誇り党の勝利は確実だとの認識を示しつつ、連立政権樹立については、公式な選挙結果を待ってから取り組む考えを示した。一方で、国民党のナタポン・ルアンパンヤーウット党首は敗北を認めた。
今回の選挙戦は、国民党の改革路線の是非を問う事実上の国民投票と位置付けられ、現状維持を掲げるタイの誇り党と対立する構図となっていた。
国民党の敗北は、革新派にとっては劇的な展開だ。軍と連携した政権が約10年続いた後、革新派は新型コロナ禍後の不満の高まりを背景に、2023年に急速に台頭していた。
今回の選挙結果はまた、軍や王党派、経済エリートの利害が重なり合うと広く見られている保守エスタブリッシュメントの底力を改めて浮き彫りにした。国民党とその前身勢力は、そうした保守エスタブリッシュメントを批判の的としてきた。
タイの誇り党は、王室に関する自由な議論を可能にする法改正に反対するなど、王室の利益の守護者としての地位も確立している。タイでは王室への言及が依然としてタブーだ。ワチラロンコン国王は投票前夜、アヌティン氏と面会した。これは公式には選挙とは無関係だが、そのタイミングから注目を集めた。
今回の結果は、今世紀に入りタクシン元首相とその盟友を含む複数の首相を軍事クーデターや司法判断で排除してきた王室支持派のエスタブリッシュメントにとって、最善のシナリオといえる。一方、王室の権限縮小を目指してきた民主派運動にとっては大きな後退を意味する。
タイの有権者は中道保守政党を選んだ。タイの誇り党は長年、主要な閣僚ポストと引き換えに、時の政権に寄り添ってきた。過去20年間に10人の首相が入れ替わったタイで、安定に向けた唯一の受け皿としての立ち位置を築いた同党は今や下院で盤石な連立政権を率いる機会を得た。
アヌティン氏は8日夜、記者団に対し「タイは現在、安定した状態にある。より強力な内閣と政府を組織し、前進することを楽しみにしている」と語った。
ただ政権発足に必要な251議席を確保するには、なお連立相手を必要とする。候補としては、74議席獲得のタクシン派ポピュリズム政党「タイ貢献党」や、59議席の「クラータム党」、他の複数の小政党が挙げられる。
原題:Thai Royalists Notch Surprise Poll Win as Progressive Push Fails、Thai Election Win for Anutin Gives Royalists Chance at Stability、Thai Royalists Notch Surprise Poll Win as Progressive Push Fails(抜粋)
(最新の開票結果や背景を追加して更新します)
--取材協力:Emma Clark、Randy Thanthong-Knight、Pathom Sangwongwanich、Suttinee (Ying) Yuvejwattana、Anuchit Nguyen.もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
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