(ブルームバーグ):オリックス不動産投資顧問は、1月に組成した不動産ファンドの募集額を300億円から400億円に拡大することを決めた。これまで不動産投資に慎重だった国内機関投資家が、積極姿勢に転じたことが背景にある。
北村達也社長がブルームバーグのインタビューで明らかにした。オリックス傘下の同社が今回追加募集するのは、オフィスや物流施設、住宅を中心とする国内の幅広い物件を対象とした総合型不動産ファンド。運用期間は8年を予定する。割安な不動産を取得して運用益と売却益の最大化を目指す。
北村氏は「国内の機関投資家はインフレに敏感に反応している。不動産はインフレヘッジの代表的な資産で関心が高まっている」と指摘した。その上で「これまで投資に慎重だった総合型不動産ファンドにも積極的だ。追加募集にまで至ったのは、幅広いアセットで積み上げた運用実績を評価された」と述べた。

物価上昇に応じて賃料や家賃を引き上げるなど不動産はインフレに強い資産とされる。すでに銀行や生命保険会社、年金基金、事業法人など10社を超える国内機関投資家が投資を決めた。当初の目標額を前倒しで達成できる見込みが立ったことから、年内に予定する最終クローズに向けて追加募集に乗り出す。借入金を含めると総額1200億円の不動産取得を計画している。
総合型不動産ファンドは、1990年代までのバブル経済において幅広い投資家から人気が高かった。しかしバブル崩壊で不動産価格が暴落して以降、日本の機関投資家は対象物件をオフィスや物流施設、ホテルなどある程度絞った私募リート(不動産投資信託)や私募ファンドに出資する傾向が高まっていた。
オフィス仲介最大手の三幸エステートによると、東京都心5区の大規模ビルの募集賃料は8月まで16カ月連続で上昇。米モルガン・スタンレーが日本の不動産に特化したファンドを立ち上げ、当初目標の750億円を大幅に上回る1310億円を投資家から調達したほか、大和証券グループ本社も海外投資ファンドなどと連携し、1000億円超の調達を目指して取り組みを進めている。
ニッセイ基礎研究所の佐久間誠主任研究員は「国内外の機関投資家の間で、日本の不動産市場は極めて有望な投資対象として評価が高まっている」と分析。「さまざまなリスクに応じたファンドが組成されることは、日本の不動産市場が成熟し、より前向きなマーケットになりつつあることの表れで歓迎すべきことだ」と語った。
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