急速に進む温暖化により、欧州が中国のエアコンメーカーの新たな成長市場となりつつある。貿易摩擦で対米輸出が落ち込む中、その減少を補っている。

中国税関当局のデータによると、今年1-7月の中国からの欧州連合(EU)および英国向けエアコン輸出は前年同期比16%増の790万台となった。中国メディアの第一財経は7月3日、珠海格力電器やハイアールスマートホーム(海爾智家)が欧州販売を急速に伸ばしたと伝えた。

一方で、1-7月の米国向け輸出は23%減少。米中間の関税戦争が貿易の混乱を引き起こした。

欧州は今年、熱波に相次いで見舞われたほか、英気象庁は今までで最も暑い夏になるのはほぼ確実だとした。従来、欧州の多くの地域でエアコンは「米国的なぜいたく」あるいは「地中海地方でのみ必要なもの」と見なされていたが、世界でも温暖化が目立って進む中で、住宅や企業で必要に応じた冷房使用が始まっている。

ゴールドマン・サックス・グローバル・インベストメント・リサーチの推計によると、EU域内の家庭のエアコン普及率は約20%にとどまるが、30年までに25%前後に増加する見通し。

北京の調査会社チャイナIOLのアナリスト、ロン・フェイ氏も「欧州は向こう数年、潜在力の大きい市場であり続ける」とコメント。特にセルビアやイタリア、スペインが需要をけん引していると付け加えた。

今が欧州へのエアコン販売の好機とみるのは中国勢だけではない。日立製作所のEUマーケティング・製品管理担当ディレクター、デビッド・ビオシュ氏は「多くの投資が欧州に向かっている」とした上で、米国の最近の関税措置もこの戦略を後押しするだろうと述べた。

英国の家電大手モーフィー・リチャーズも欧州市場の潜在力に強気だ。同社製品は中国で生産されているが、国際部門責任者のマーティン・グオ氏は「欧州は小型のエアコン、特に工事不要のポータブルエアコンに対する需要が安定して予測しやすく、購買力も高い大きな市場だ」と指摘。

「異常気象の頻発」が市場拡大の追い風になると説明し、「欧州市場は米国市場の不安定さを中長期的に補う可能性がある」とも述べた。

原題:China AC Exports to Europe Surge Amid Trade Wars, Heat Waves (1)(抜粋)

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