増え続ける政府債務や財政赤字、米連邦準備制度の独立性への攻撃、関税措置など、米国債市場の混乱を招く条件はそろっているよう見える。だが日本や英国や国債市場が財政懸念の打撃を受ける中で、トランプ大統領2期目の米国債相場は、驚くほど堅調に推移している。

米10年債利回りは年初来で0.3ポイント余り低下。この年限の国債利回りが低下した主要国市場は米国だけだ。

市場で不人気の米30年債も、他国より良い成績を残している。利回りは今年約0.12ポイント上昇しているものの、英国やフランス、1ポイント余り上昇した日本に比べ限定的だ。

世界的に借り入れコストは上昇し、投資家や政策当局の頭痛の種となっている

米国債市場では相場変動も4月以降は縮小傾向にあり、主要なボラティリティー指標は3年ぶりの低水準に迫っている。

ヤルデニ・リサーチ創業者のエド・ヤルデニ氏は、「債券市場は落ち着いている」と指摘。他国の債券市場が混乱し財政や経済に圧力がかかる中でも、米国は「驚くほど安定している」との見方を示した。

同氏は1980年代、国債を売り利回りを押し上げ財政規律をもたらす投資家を指す「債券自警団」という言葉を考案。トランプ氏が大統領選で勝利して以降、米国の金利は比較的高水準にとどまっているが、債券自警団のような標的を絞った市場の圧力は今のところ見受けられない。

足元では雇用拡大の減速を示すデータを基に米国債利回りは低下しており、10年債利回りは5月上旬以来の4.17%割れとなった。雇用の拡大ペース鈍化が、5日に発表される8月の雇用統計であらためて確認される可能性がある。連邦準備制度が今月にも利下げに踏み切る余地が生まれている。

JPモルガン・インベストメント・マネジメントのポートフォリオマネジャー、プリヤ・ミスラ氏は、「労働市場が勢いを失い続ければ、米市場のこのトレンドが続く可能性がある」と指摘した。期間が長めの債券よりも短期債を重視する「スティープナー戦略」を選好しているという。

ただ、市場参加者が油断している可能性もある。レイ・ダリオ氏ら一部の市場関係者が予測するように危機がじわじわと迫っているなら、無防備のまま投資家がトラブルに陥ったとしても、今回が初めてではない。

他国と同様、米30年債は他の年限に比べると弱い。長期債保有に伴う見返りとして投資家が要求する10年債のタームプレミアムは、10年ぶりの高水準に迫っている。

原題:Bond Vigilantes Fended Off as US Debt Emerges Surprise Winner(抜粋)

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