(ブルームバーグ):米ニューヨーク市では交通渋滞が再び悪化し、列車の遅延も日常茶飯事となり、市政を巡る対立が激化している。そうした中でニューヨーカーに手っ取り早い「脱出ルート」を提供する新たな通勤ヘリコプター路線が登場する。
ヘリコプターのライドシェア事業を手がけるブレード・エア・モビリティは12月1日、マンハッタンとウエストチェスター・カウンティ空港を結ぶ通勤ヘリの試験運航を開始する。平日のフライトは、オフィス出社が常態化した郊外在住のワーカーを対象とする。所要時間はおよそ12分。
ブレードのロブ・ウィーゼンタール最高経営責任者(CEO)は「ニューヨーク大都市圏の郊外とマンハッタンを結ぶ交通量は新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)前を上回っている。週5日出勤が戻った今こそ、ブレードがこの需要に応える時だ」と語った。
ブレードは「空飛ぶタクシー」として注目される電動垂直離着陸機(eVTOL)を開発している米ジョビー・アビエーションの傘下にある。同社は連邦航空局(FAA)から全電動エアタクシーの運航許可を取得することを目指している。ウィーゼンタール氏によると、承認を得られれば、ニューヨーク市内の着陸地点を増やし、コストや騒音の低減を図る計画だという。
今回開始する通勤ヘリサービスは速度面で優れる一方、運賃は自動車やメトロノース鉄道の利用より高い。ブレードの通勤パスを利用すれば片道125ドル(約1万9300円)、パスがない場合は225ドルとなる。通勤パスは週250ドル、月1000ドル、年1万ドルで、割安料金での乗り放題となる。
運航は朝夕に設定され、ウエストチェスターの空港のプライベートターミナルと、ハドソンヤード近くのマンハッタン西30丁目12番街にある「ブレード・ラウンジ・ウエスト」を結ぶ。
ブレードは2021年にも郊外路線の構想を打ち出したが、コロナ禍で通勤客の職場復帰が想定より遅れたため断念していた。今回は感謝祭翌日のブラックフライデーに当たる11月28日にプレ運航を行い、ハドソンヤードでの買い物需要に対応する。
これによりマンハッタンの数多くの観光名所へのアクセスが向上する。長期的には、都会から逃れようとする人々の需要が生まれる可能性もある。ニューヨーク市長選で企業・富裕層への増税を訴えたゾーラン・マムダニ氏が当選したことを受け、一部の裕福なニューヨーカーの間では、居住地を見直す動きが出る可能性もある。
原題:NYC Gets 12-Minute Helicopter for Suburbanites Avoiding Gridlock(抜粋)
--取材協力:Max Rivera.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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