(ブルームバーグ):米アルファベット傘下グーグルのウェブブラウザー「クローム」を巡り米司法省が起こした反トラスト法(独占禁止法)訴訟で、ワシントンの連邦地裁判事は2日、グーグルは検索データの一部を競合他社と共有しなければならないが、クロームを売却する必要はないとの判断を示した。
グーグルは昨年、検索市場を違法に独占していたと認定されたが、今回の判断により、米政府が求めていた最も厳しい是正措置の一つを回避した。
一方でアミト・メータ判事は、グーグルに対しインターネット検索に関する独占契約の締結を禁じる措置は命じた。
今回の措置は、グーグルがオンライン検索および検索広告市場を違法に独占していたとメータ判事が昨年認定したことを受けたもので、今年4月には是正策を決定するための審理が3週間にわたり行われていた。
グーグルは声明で今回の判断について、人工知能(AI)によって検索産業がどう変化したかが認められたと評価。その上で、検索市場の独占に関する昨年の認定には依然として異議があるとの立場を示した。また、判事が命じたデータ共有義務についても懸念を表明した。
同社の規制担当副社長、リーアン・マルホランド氏は「こうした義務による利用者やプライバシーへの影響について懸念しており、現在、慎重に裁判所判断を精査している」と説明。また「裁判所は、クロームやアンドロイドを売却させることは、検索の流通に焦点を当てた本件の範囲を超え、消費者やパートナー企業に害を及ぼすと認めた」とも指摘した。
今回の判断は四半世紀余りでテクノロジー業界に対する影響が最も大きい司法命令の一つ。今後メタ・プラットフォームズ、アマゾン・ドット・コム、アップルなどに対する類似訴訟で、他の判事が判断を下す際の指針となる可能性もある。
判事の判断が公表された後、アルファベットの株価は時間外取引で一時8.7%急伸した。アップルの株価も同4.3%上昇した。
さらに、グーグルにとってもう一つの勝利となったのは、検索エンジンをデフォルト設定にする際にアップルなど第三者への支払いを裁判所が禁止しなかった点だ。
メータ判事は「グーグルからの支払いが打ち切られれば、流通パートナーや関連市場、そして消費者に、場合によっては壊滅的な下流への悪影響をほぼ確実に与える。これは広範な支払い禁止に反対する根拠となる」と記した。
今回の判断はアップルにとって現状維持を意味し、同社は今後もグーグルから年間200億ドル(約3兆円)を超える支払いを受け取り続けることができる。
アップルはグーグルの検索エンジンを優遇し、パソコンとモバイル端末ではブラウザー「サファリ」の検索バーで最も目立つ位置に配置している。ユーザーはマイクロソフトの「ビング」や「ダックダックゴー」など他の選択肢に切り替えられる。
今回の判断は、検索エンジンのデフォルト設定に関する現行の取り決めを、軽微な調整を加えた上で継続可能であることを示唆している。
具体的には、アップルは代替検索エンジンの選択肢をより明確に提示することや、デフォルト検索エンジン設定の年次変更などが必要となる。判事はまた、プライバシーモードでは異なるデフォルト検索エンジンの設定を可能にするよう求めた。この点については、アップルは数カ月前に対応済み。
今回の判断の有効期間は6年。グーグルはマイクロソフトやダックダックゴーのほか、オープンAIやパープレキシティなどの新興AI企業といった競合他社が検索エンジンの構築を進められるよう、検索データを限定的に共有することが求められる。
判事はさらに、基本ソフト(OS)アンドロイド搭載の端末で「グーグル・プレイ」を利用するために、グーグルの全アプリを事前インストールすることを端末メーカーに要求する行為も禁止した。司法省にとっては、データ共有義務に加え、二つ目の勝利となった。
米司法省反トラスト部門の責任者、ゲイル・スレーター氏は「グーグルは責任を問われている。裁判所は当局が求めた全ての救済措置を命じたわけではないが、競争を回復し、デジタル市場に再び公正な競争環境をもたらすための是正措置の必要性を認めた。われわれは今後の対応を検討している」と述べた。
ダックダックゴーのガブリエル・ワインバーグ最高経営責任者(CEO)は、「裁判所が命じた是正措置では、グーグルの違法行為に適切に対処するために必要な変化を強制できないと思う」と指摘。「グーグルは依然として独占を利用して、AI検索を含む分野で競合他社を抑え込むことが可能な状態にある」と批判した。
パープレキシティはコメントを控えた。マイクロソフト、オープンAIにコメントを要請したがすぐには返答はなかった。
グーグルに対する訴訟は、トランプ政権1期目終盤に提起された。バイデン政権下の2023年に司法省主導で10週間にわたる審理が行われ、メータ判事は24年8月、政府側の主張を支持する判断を下した。
判事の認定を踏まえ、司法省は是正措置として、グーグルに対しクロームの売却や、検索結果生成に用いている一部データの共有を求めることを提案。さらに検索エンジンのデフォルト設定を確保するために行っている支払いの禁止などをメータ判事に求めていた。
原題:Google Dodges Chrome Sale in Antitrust Ruling, Must Share Data、Google Doesn’t Have to Sell Chrome in Antitrust Ruling (4)(抜粋)
(グーグルと司法省などの見解を追加して更新します)
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