ライバルの躍進とサムスンの致命的な誤算
このAI革命の波に、サムスンは乗り遅れました。
皮肉なことに、そのチャンスを掴んだのは、長年サムスンの背中を追いかけてきた国内のライバル、SKハイニックスでした。
実はSKハイニックスは、AIブームが起こるずっと前の2013年に、AMDと提携してHBMを開発していました。
当時は主に高性能なゲームPC向けのニッチな製品と見なされており、大きな市場ではありませんでした。
しかし、彼らは未来を見据え、この技術への投資を続けていたのです。
半導体業界は、巨額の投資を5年も前から行う必要がある、未来予測が極めて重要な世界です。
ChatGPTの登場でHBMへの需要が爆発したとき、その準備ができていたのはSKハイニックスでした。
彼らはAI半導体の王者であるNVIDIAとの独占的な供給契約を結び、一気に市場の主役に躍り出たのです。
NVIDIAの株価がAIブームで天文学的に上昇したことは記憶に新しいですが、その恩恵はサプライヤーであるSKハイニックスにも及びました。
四半期利益は過去最高を記録し、株価も歴史的な水準まで高騰。
今や、NVIDIAの製造コストの約20%をSKハイニックスが占める一方、サムスンが占める割合は、わずか1%程度に過ぎないと分析されています。
この結果、2024年、サムスンは30年間守り抜いてきたDRAM市場の首位の座を、SKハイニックスに明け渡すという屈辱を味わいました。
事態を重く見たサムスンの副会長が、株主総会で異例の謝罪を表明するほどの、壊滅的な事態だったのです。
