「二正面作戦」の苦悩と反撃の狼煙

現在、サムスンは必死に失地回復を図っています。

次世代のHBMである「HBM4」の開発に総力を挙げ、SKハイニックスとの差を縮めようとしています。

しかし、NVIDIAの厳しい品質テストに合格できず、未だに主要サプライヤーの座を掴めていないのが現状です。

さらにサムスンの苦悩は、HBMだけではありません。

半導体事業にはもう一つの柱、「ファウンドリー事業」があります。

これは、他社が設計した半導体を製造する受託生産ビジネスですが、ここでも巨大な壁が立ちはだかっています。

台湾のTSMCが、世界のファウンドリー市場の約3分の2を支配する圧倒的なガリバーとして君臨しているのです。

サムスンの市場シェアは約8%に留まり、大口顧客の獲得に苦戦しています。

まさに、メモリ事業ではSKハイニックスと、ファウンドリー事業ではTSMCと戦わなければならない、困難な「二正面作戦」を強いられているのです。

しかし、トンネルの先に全く光が見えないわけではありません。

2024年7月、サムスンはテスラと165億ドルにのぼる次世代AI半導体の生産契約を結んだと発表しました。

これは、休止状態にあると見られていたサムスンのファウンドリー事業にとって、大きな希望の光となるかもしれません。

巨大企業だからといって、明日の成功が保証されているわけではない――。

かつて世界最大の半導体メーカーだったインテルが、今やその地位から大きく後退したように、テクノロジー業界の栄枯盛衰はあまりにも早く、そして非情です。

サムスンはまだインテルほどの凋落を見せているわけではありません。

しかし、投資家や社員が抱く懸念は、現実のものとなる可能性を秘めているのです。

韓国のテクノロジーの未来は、この巨人が再び立ち上がることができるかにかかっています。