AI革命が引き起こした地殻変動
長年、サムスンの栄華を支えてきたのは、テレビやスマートフォンではなく、その内部で動く目に見えない技術、コンピュータメモリでした。
特に「DRAM(Dynamic Random-Access Memory)」は、スマートフォンから世界最大級のスーパーコンピュータまで、あらゆるデジタル機器に不可欠な部品であり、サムスン電子の利益の50%から70%を叩き出す主力製品でした。
サムスンは、このDRAMという市場で30年近くにわたり、絶対的な王者として君臨してきました。

しかし、その状況はAIの登場によって一変します。
2022年末にChatGPTがリリースされると、世界は生成AIの時代に突入しました。
AI、特に大規模言語モデルは、従来のコンピュータとは比較にならないほど大量のデータを、かつてない速さ処理する必要がありました。
これまでのDRAMでは、到底追いつかなくなったのです。
そこで脚光を浴びたのが、「HBM(High Bandwidth Memory/広帯域メモリ)」と呼ばれる、次世代の特殊なDRAMでした。
HBMは、複数のDRAMチップを垂直に積み重ねることで、一度に大量のデータを転送することが可能です。
そしてAIの性能を最大限に引き出すためには、このHBMが不可欠となったのです。
